成田デモ事件

成田デモ事件：激動の1968年、新左翼と機動隊の衝突

1968年、千葉県成田市では、成田国際空港建設予定地をめぐる激しい抗議活動が展開され、三度にわたる大規模なデモ事件が発生しました。これらの事件は、新左翼学生運動と機動隊との衝突、そして地元農民の抵抗という複雑な様相を呈しており、後の成田空港建設反対闘争の大きな転換点となりました。

第1次成田デモ事件（2月26日）：空港公団分室への突入

1968年2月26日、三里塚芝山連合空港反対同盟、全日本学生自治会総連合（三派全学連）、砂川基地拡張反対同盟が共同で集会を開催。集会後、全学連を中心とした約1000人のデモ隊は、成田空港公団分室への突入を試みました。ゲバ棒や石を武器に機動隊と激しい衝突が発生し、機動隊側に多数の負傷者が出ました。学生側も逮捕者を出しました。この際、反対派が公団分室から設計図を奪取したことは、後の空港闘争における戦略策定に影響を与えました。反対同盟代表の戸村一作氏は重傷を負い、激しい怒りを露わにしました。当時の佐藤栄作首相は、この事件を憂慮する日記を残しています。

第2次成田デモ事件（3月10日）：大規模衝突と厳格な警察対応

3月10日、空港反対同盟と全国反戦青年委員会が共催した集会後、デモ隊は機動隊と再び大規模な衝突を起こしました。警察側は、前日の反省から機動隊を大規模に配置。催涙剤入りの水を放出するなど、強硬な鎮圧を行いました。結果、多数の逮捕者と負傷者が出ました。この事件では、TBSが過激派に協力したとされ、批判を浴びました。事件後、成田市長は空港公団の移転を要望するなど、地域住民の怒りや混乱は大きくなりました。佐藤首相は、学生の暴挙を厳しく断罪する日記を残しています。

第3次成田デモ事件（3月31日）：公園での集会と公団宿舎襲撃

3月31日、成田市営グランドの使用が禁止されたため、三里塚第2公園で集会が行われました。戸村代表は、空港建設阻止のためには血を流す覚悟が必要だと演説。集会後、公団分室へのデモ行進で機動隊と衝突が発生し、警察官待機宿舎が襲撃される事態に発展しました。この事件でも多数の逮捕者と負傷者が出ました。

成田デモ事件の影響：暴力闘争への転換

これらの事件は、成田空港建設反対闘争の様相を大きく変えました。当初平和主義を掲げていた戸村氏も、国家権力に対抗するための暴力の必要性を主張するようになりました。1967年までに反対運動を支援していた日本共産党が農民を見捨てたことで、反対同盟は新左翼との連携を強め、これ以降、激しい実力闘争が展開されることになります。

参考文献

朝日ジャーナル編集部 編『三里塚 : 反権力の最後の砦』
飯高春吉『北総の朝あけ : 成田空港闘争と警備の記録』
大坪景章 著、東京新聞千葉支局 編『ドキュメント成田空港 : 傷だらけの15年』
佐藤文生『はるかなる三里塚 : インサイド・レポート成田空港』
公安調査庁『成田闘争の概要』
隅谷三喜男『成田の空と大地 闘争から共生への途』
原口和久『成田空港365日 1965-2000』
原口和久『成田 あの1年』
* 伊藤睦 編『三里塚燃ゆ 北総台地の農民魂』

これらの事件は、日本社会の激動期における政治的、社会的葛藤を象徴する出来事であり、現在もなお、多くの議論を呼び起こしています。

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