或る夜の出来事

映画『或る夜の出来事』の魅力

『或る夜の出来事』は、1934年に公開されたアメリカ製のスクリューボール・コメディであり、映画史において特に重要な位置を占める作品です。運命の出会いを通じて織り成されるストーリーは、「ボーイ・ミーツ・ガール」という典型的なプロットを基盤にしていますが、その進行には独自の工夫が凝らされています。本作はコロンビア ピクチャーズによって製作され、フランク・キャプラが監督を務めました。

映画の製作背景

当時、アメリカ映画界では「ボーイ・ミーツ・ガール」が主流であり、多くの作品がこのテーマで作られていました。しかし、キャプラはその枠を超えて、台詞回しやテンポの良い展開で観客を引き込む手法を駆使しました。本作は、トーキー映画として進化を遂げていく中で、キャプラがその技術を完璧にマスターしていたことを示しています。

『或る夜の出来事』は、第7回アカデミー賞では作品賞や監督賞、主演男優賞と主演女優賞を受賞し、特に注目される6部門を制したことも話題となりました。この成果は、1975年まで続く大記録となるほどでした。

原作と脚本の経緯

本作の原作は、サミュエル・ホプキンス・アダムズの短編小説『夜行バス』です。この作品に興味を持ったコロンビア・ピクチャーズは、映画化権を取得し、ロバート・リスキンによって脚本が作成されました。興行的に成功しなかった過去のバスを題材にした映画を気にしていたキャプラとリスキンは、タイトルを変更したことも興味深いです。

キャスト選びの舞台裏

主演に関しては、クラーク・ゲーブルがピーター・ウォーン役にキャスティングされるまでに多くの試行錯誤がありました。コロンビア ピクチャーズは有名俳優を借りるスタンスを持っており、当初はMGMのロバート・モンゴメリーとマーナ・ロイを考えていましたが、最終的にゲーブルが参加しました。

また、エリー役にはクローデット・コルベールが適役とされ、キャプラが彼女を引き入れるために交渉を重ねた結果、コルベールは「4週間で5万ドル」という条件を提示しました。これは驚くべき条件とも言えたが、コロンビア側はこれを受け入れました。

ストーリーの魅力

物語は、富豪の令嬢エリーが父によってヨットに監禁され、脱出を試みるところから始まります。彼女はニューヨークを目指す夜行バスに乗り込む中で、新聞記者ピーターと出会い、初めはお互いに反発し合いますが、次第に状況が変わっていきます。

バスが大雨に見舞われ、様々なトラブルに直面しながらも、エリーとピーターは共に行動を共にし、徐々にお互いに惹かれていきます。特に彼らの共同生活の中で作り上げられる「ジェリコの壁」に象徴されるように、お互いの気持ちに気づきながらも意地を張って素直になれない様子が描かれています。

クライマックスではエリーが結婚のお知らせを聞いて、父親の助けを受けることでピーターとの愛の真実に気づき、最後には彼に向かう決断をする姿が印象的です。

受賞歴と評価

『或る夜の出来事』は、アカデミー賞での受賞歴も多く、映画史に残る名作としての地位を確立しています。豪華なキャストや独特なストーリー展開、キャプラの演出が相まって、今日でも多くの観客から愛される作品となっています。この映画は、時代を超えて楽しめる魅力を持ち続けています。

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