戸倉駅

戸倉駅（とぐらえき）

長野県千曲市の中心部、大字戸倉に位置する戸倉駅は、しなの鉄道が運営するしなの鉄道線の停車駅です。地域の交通網において、長年にわたり重要な役割を担ってきました。

かつて、まだJR東日本がこの区間を管轄していた時代には、軽井沢方面からの列車におけるワンマン運転の終点とされており、当駅より長野方面へ向かう列車は原則として車掌が乗務するツーマン運転が実施されていました。しかし、2013年（平成25年）3月のダイヤ改正以降、当駅と長野駅を結ぶ一部の列車においても、ワンマン運転が行われるように運行形態が変更されています。

本駅は、しなの鉄道線の主要な運行拠点の一つとして機能しており、広大な敷地には車両基地や多数の留置線が整備されています。これにより、列車の滞泊や保守点検などが効率的に行われており、安定した運行体制を支えています。また、主要な列車が停車する駅でもあり、快速列車に加え、特別快速「軽井沢リゾート号」の一部や観光列車「ろくもん」も停車し、観光やビジネスでの利用客にも便宜を図っています。

歴史

戸倉駅の開設は、今から100年以上前の歴史に遡ります。1912年（明治45年）2月11日、鉄道院信越線の駅として営業を開始しました。信越線がこの地域を通過するようになった当初、戸倉村には駅が設けられなかったため、当時の地元住民からの強い要望を受け、請願駅として建設されたという経緯があります。これは、地域住民の鉄道に対する熱意を示すエピソードと言えるでしょう。

昭和に入り、駅の機能は変化していきます。1973年（昭和48年）7月1日には、長年にわたり行われてきた貨物取扱が廃止されました。同年12月には、現在の駅舎へと改築が行われ、利用環境が近代化されました。さらに1985年（昭和60年）3月14日には、小荷物の取り扱いも終了し、旅客専門の駅へと転換が進みます。一時期、1986年（昭和61年）3月20日には、かつて団体改札口として使われていたスペースに直営のコーヒーショップ「エコー戸倉店」が開業し、駅利用者の憩いの場となっていましたが、現在はその姿を見ることはできません。

国鉄の分割民営化に伴い、1987年（昭和62年）4月1日からは東日本旅客鉄道（JR東日本）の駅として運営されることになります。その後、北陸新幹線の延伸開業に伴う並行在来線の経営分離の方針により、1997年（平成9年）10月1日、しなの鉄道へと移管され、現在に至ります。近年では、2023年（令和5年）4月1日から簡易委託駅となり、千曲市が窓口業務の一部を受託しています。また、将来的なサービス向上として、2026年（令和8年）春季には交通系ICカード「Suica」の利用サービスが開始される予定であり、利便性の向上が期待されています。

駅構造

戸倉駅は、地上にホームが設置された構造を持つ駅で、合計2面3線の線路配置となっています。線路の片側に1本の線路に接する単式ホーム（1番線）が1面、その隣に2本の線路を両側から挟む形の島式ホーム（2番線と3番線）が1面設けられています。各ホーム間は跨線橋によって連絡されていますが、残念ながらエレベーターが設置されていないため、車椅子などでの利用者が2番線や3番線を利用する際には、駅員に申し出て、ホームの軽井沢寄りにある構内踏切を利用する必要があります。

前述の通り、当駅は簡易委託駅となっており、窓口業務は千曲市が担当しています。かつては、駅窓口に併設されていたビジネスえきねっとサービスを通じて、JR線の切符を購入することも可能でしたが、現在はその取扱いは終了しています。

その他

駅の東側には、かつて戸倉砕石工業の砕石場へと続く引込線が存在していました。JR時代には主に貨物輸送のために使用されていましたが、しなの鉄道への移管に伴い貨物輸送が廃止されたため、この引込線も現在では車両を留置するための線路として利用されています。なお、砕石場自体は現在も操業を続けています。

利用状況については、近年では1日あたり1,000人近い乗車人員で推移しており、地域における通勤・通学や生活交通の要として機能しています。過去の統計資料によると、乗降客数には時期による変動が見られます。

駅周辺

戸倉駅周辺は、市の生活圏の一部を形成しています。駅から少し離れた西側には、信州を代表する温泉地の一つである戸倉上山田温泉の温泉街が広がっており、その距離は約2.5キロメートルです。朝夕の時間帯には、温泉街と駅を結ぶ送迎バスが運行されており、温泉へのアクセス拠点としても利用されています。その他、駅周辺には地域住民の生活を支える金融機関として八十二銀行や長野県信用組合の支店、戸倉郵便局などがあります。主要幹線道路である国道18号線も近くを通っており、自動車交通の利便性も比較的良好です。また、駅前には千曲市循環バスの停留所も設置されており、市内各方面へのバスアクセスも確保されています。

隣接する駅は、しなの鉄道線の普通列車では坂城駅と千曲駅の間、快速列車では坂城駅（一部通過）または上田駅と屋代駅の間に位置しています。

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