戸畑駅 (西鉄)

戸畑駅：西鉄北九州線の歴史を刻んだ停留場

この記事では、福岡県北九州市戸畑区に存在した西日本鉄道（西鉄）北九州線（戸畑線）の停留場、戸畑駅について詳述します。戸畑漁港近郊の港湾地域に位置し、若戸渡船戸畑渡場と至近距離にあったことから、多くの乗客で賑わった駅でした。国鉄鹿児島本線戸畑駅から約500mの距離にあり、利便性の高い立地も特徴の一つでした。

歴史：1912年から1985年までの軌跡

戸畑駅は、1912年（明治45年）7月1日、九州電気軌道の戸畑線開業と同時に誕生しました。その後、1942年（昭和17年）9月22日の西日本鉄道設立に伴い、同社の停留場となりました。そして、1985年（昭和60年）10月20日、戸畑線全線廃線により、その歴史に幕を閉じました。73年間、地域住民の生活を支え続けた戸畑駅は、時代の移り変わりを象徴する存在でした。

駅構造：頭端式ホームと複雑な配線

戸畑駅の停留場部分は、道路から南側に離れた場所に新設軌道として建設されました。頭端式のホームを備え、乗降場の構造は時代とともに変化しました。1971年頃は4面3線でしたが、廃止時には3面2線となっていました。各着発線の両側にホームが設置され、ホーム頭端部には操車所、乗務員待機所、定期券発売所が併設されていました。

停留場入口には、かつて両渡り分岐器（シーサスクロッシング）が設置されていましたが、廃止が近づくにつれて配線は簡素化されました。末期には両渡り分岐器が撤去され、上下本線が一旦合流して単線となり、すぐに再び分岐する構造に変わりました。

駅周辺：港湾地域と交通の要衝

戸畑駅周辺は、戸畑漁港や若戸大橋戸畑橋台などがあり、交通の要衝として機能していました。特に、若戸渡船戸畑渡場とは道路を挟んで向かい合う位置にあり、若松方面へのアクセスも容易でした。九州電気軌道時代には、駅周辺に系列の九軌百貨店も出店しており、商業施設も充実していました。

廃止後：バス発着所への転身

戸畑線の廃止後、戸畑駅の跡地はバス発着所として再利用されました。待合室、バス乗務員待機所、バス駐車スペースなどが整備され、「戸畑渡場バス発着所」として、新たな役割を担っています。かつての賑わいは失われたものの、公共交通機関としての機能は維持され、地域社会に貢献し続けています。

隣の駅

西日本鉄道戸畑線

戸畑駅 - 元宮町駅

参考文献

奈良崎博保 「追跡風土記 西鉄北九州線をゆく(1)」 『鉄道ジャーナル』1971年9月号（No.53）、鉄道ジャーナル社
奈良崎博保 『福岡・北九州 市内電車が走った街 今昔』 JTBパブリッシング、2002年4月

関連項目

* 日本の鉄道駅一覧

もう一度検索