押出仏

押出仏（おしだしぶつ）について

押出仏は、薄く成形された銅板を采用して、鎚で叩くことで文様を浮かび上がらせ、さらに鍍金や箔押しが施された仏像を指します。この技法は「打出仏」とも言われ、そのルーツは中国の鎚鍱像にあるとされています。押出仏が日本に伝わったのは、朝鮮半島を経由しており、6世紀から7世紀の頃のこととされ、その後、飛鳥時代の後期には最盛期を迎え、奈良時代まで続けられました。平安時代には見ることができなくなりますが、押出仏ならではの特徴である、多数の同一型を一括して制作できる点が、信者の念持仏や寺院の装飾に活用されたことが伺えます。

歴史的背景

押出仏の起源は、中国に遡ります。『高僧伝』には太和年間に「金鍱の千像」を制作したとの記録があり、現存する最古の作品は6世紀末のものと推測されています。日本における押出仏のデザインは、中国の六朝時代から唐時代のものと多くの類似点があり、明らかに大陸の影響を受けていると考えられています。中でも、法隆寺の玉虫厨子は日本で最も古い押出仏の遺品であり、厨子の内壁に施された千仏像は『法隆寺資財帳』にも記載されており、8世紀にはすでに押出仏という名称が確立していたことが分かります。また、一般信者から寄付された押出仏も存在し、その一部は信者が亡くなった後に家族によって納められたと考えられています。

奈良時代には特に多くの押出仏が制作され、天武・持統・文武の時代には技術も革新されました。天武8年（679年）には「諸国家ごとに仏舎をつくり、仏像および経を置きて礼拝供養せよ」との詔が出されており、この時代に仏像の需要が高まる中で押出仏が重要視されたと推測されます。さらに、奈良時代の正倉院文書『造東大寺司告朔解』にも「作塔基打出像五十躯」と記載されており、東大寺の塔内に押出仏が貼り付けられていたことが示されています。

作例と技術

押出仏の作品には多くの優れた例があります。山田寺や夏見廃寺では、堂塔内を千仏像で飾る事例が確認され、玉虫厨子の内部には4468体もの押出仏が貼り付けられていました。このような押出の千仏像で装飾された厨子は、『大安寺資材帳』にも記載があり、複数の作例が存在したことが伺えます。その中でも、東京国立博物館に所蔵される法隆寺献納宝物の阿弥陀三尊及び僧形像は、特に優れた押出仏とされ、構造や装飾の技術について貴重な資料となっています。

押出仏の製作方法は、一般的に鋳造された凸型に薄い銅板を押し付け、槌で叩いて像を浮かび上がらせるというものです。法隆寺には、この技法を用いて製作された銅板如来三尊像が伝来しており、その他にも同型の原型から作られた押出仏が多数残っており、製作法の研究にとって貴重な資源です。

押出仏はその特異な形式と技法により、文化的にも重要な位置を占めており、中世の日本仏教美術の発展に寄与したと考えられています。

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