拾遺記

『拾遺記』の概要

『拾遺記』（しゅういき）は、中国の後秦時代に王嘉によって編纂された志怪小説集であり、全10巻から成る作品です。この著作には、上古時代から東晋時代にかけての様々な物語や伝説が含まれており、特に古代の神秘的な出来事や不思議な現象が描かれています。

王嘉について

王嘉は隴西郡安陽県の出身で、字は子年です。彼は非常に著名な人物であり、特に未来を予知する能力があると知られていました。しかし、彼の人生は波乱に満ちており、390年頃には後秦の皇帝姚萇の機嫌を損ねたため、命を落とすこととなりました。王嘉は詩や文章に才能を持つだけでなく、彼の作品は後の文学に大きな影響を与えました。

編纂の経緯

王嘉が編纂した本来の『拾遺記』の原本は散逸してしまいましたが、南朝梁の蕭綺がその遺文を集めて1冊の形にまとめました。蕭綺が添えた序文によれば、元の作品は全19巻、220編からなるとされています。しかし、『晋書』の「王嘉伝」では『拾遺記』は全10巻と記されており、これらの情報は必ずしも一致しません。また、現存する版が東晋時代の物語を含む一方で、蕭綺の序文には「事は西晋末におわる」と書かれており、こちらも疑問を呼ぶ部分です。

文献と影響

『拾遺記』は『漢魏叢書』に収録されており、多くの研究者によってその価値が評価されています。竹田晃氏や黒田真美子氏の編纂した『中国古典小説選』第2巻（明治書院、2006年）中には、王嘉の作品を扱った部分もあり、古典文学を学ぶ上で重要な資料となっています。

この作品は、中国古典文学における志怪小説の一翼を担っており、様々な時代の物語が交錯する中で当時の文化や信仰などが色濃く表現されています。志怪小説群の中で特に神秘的な要素に焦点を当てる『拾遺記』は、古代中国における人々の想像力や生活様式を知る手がかりを私たちに提供してくれます。

まとめ

『拾遺記』は王嘉の独自の視点から描かれた文学作品であり、古代から中世にかけての文化や思想を垣間見ることができる貴重な資料です。その内容は、当時の人々の感性や世界観を映し出しており、歴史的な興味を引くことは間違いありません。

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