持田季未子

持田 季未子（もちだ きみこ）

日本の美術史および比較文化の研究において重要な足跡を残した学者である持田季未子氏は、1947年10月21日にこの世に生を受け、2018年12月18日に71歳でその生涯を終えました。大妻女子大学の名誉教授を務め、幅広い学術分野で功績を残しました。

経歴

東京都港区高輪に生まれた持田氏の本名は公子です。学業は国際基督教大学でスタートし、1970年に卒業。その後、東京大学大学院人文科学研究科の比較文学比較文化専攻に進み、博士課程で単位を取得し満期退学されました。研究者としてのキャリアは東京造形大学から始まり、助教授を経て1993年には教授に昇任しています。1998年からは大妻女子大学比較文化学部の教授として教鞭を執り、長年にわたり多くの学生を指導しました。2018年に大学を定年退職し、名誉教授の称号を得ています。

研究活動と業績

持田氏の研究は多岐にわたります。当初は詩人であり建築家でもあった立原道造の研究に取り組んでいましたが、次第に建築史や美術史へと研究領域を広げていきました。その幅広い探求は、数々の独創的な著作に結実しています。特に、1992年に刊行された著書『絵画の思考』は美術史研究における深い洞察が評価され、同年の吉田秀和賞を受賞しました。この受賞は、氏の学術的貢献が広く認められた証と言えます。

主要な著作

氏がその研究成果をまとめた主要な著書としては、以下のものが挙げられます。

『生成の詩学 かたちと動くもの』（新曜社、1987年）
『立原道造と伝統詩』（新典社、1991年）
『絵画の思考』（岩波書店、1992年）
『芸術と宗教』（岩波書店、1997年）
『希望の倫理学 日本文化と暴力をめぐって』（平凡社選書、1998年）
『一七世紀の光-オランダ建築画の巨匠サーンレダム』（岩波書店、2009年）
『明治の精神　持田巽の生涯』（彩流社、2012年）
『セザンヌの地質学　サント・ヴィクトワール山への道』（青土社、2017年）

これらの著作は、美術、建築、文化、倫理など、多様なテーマに対する氏の深い考察を示すものです。

翻訳業

持田氏は、海外の重要な学術書や美術関連書籍の翻訳にも精力的に取り組みました。特に以下の翻訳は、日本の研究者や読者が海外の知見に触れる上で貴重な貢献となりました。

アンリ・マスペロ 著『道教の養性術』（せりか書房、1983年）
E.ルーシー＝スミス 著『1930年代の美術 不安の時代』（多木浩二氏との共訳、岩波書店、1987年）
* エーバーハルト・ロータース 著『ベルリン――芸術と社会 1910-1933』（多木浩二氏、梅本洋一氏との共訳、岩波書店、1995年）

逝去

2018年に大妻女子大学を定年退職し、名誉教授となったその年の12月18日、癌による多臓器不全のため逝去しました。享年71歳でした。持田季未子氏の生涯は、美術史と比較文化の探求に捧げられ、その研究成果と教育への貢献は学術界に大きな影響を残しました。

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