指定弁護士

指定弁護士とは

指定弁護士とは、付審判制度（準起訴手続）および検察審査会強制起訴制度において、検察官の職務を代行する弁護士のことです。検察官が不起訴とした事件について、裁判所が付審判決定を下した場合や、検察審査会が起訴相当の議決をした場合に、検察官の代わりに公訴を維持する役割を担います。

名称について

検察審査会法や検察審査会法施行令では「指定弁護士」という文言が用いられていますが、刑事訴訟法では「指定を受けた弁護士」や「検察官の職務を行う弁護士」という表現が使われています。一方で、検察官の職務を行う弁護士に支給する手当を定める政令では、「刑事訴訟法第二百六十八条第一項又は検察審査会法第四十一条の九第一項若しくは第四十一条の十一第二項の指定を受けた弁護士」を「指定弁護士」と定義しています。

指定の手続き

指定弁護士は、裁判所によって指定されると法律で定められています。しかし、実際には、最高裁判所と日本弁護士連合会の取り決めにより、事件が係属する地方裁判所が、その管轄区域内の弁護士会に推薦を依頼し、弁護士会が推薦した弁護士が指定されることが慣例となっています。

指定された弁護士が職務を行うのに適さないと判断された場合や、特別な事情がある場合には、裁判所は指定を取り消すことができます。また、指定を取り消した後でも、裁判所は再度、指定弁護士を指定することが可能です。

職務内容

指定弁護士は、裁判所の付審判決定や、検察審査会の起訴議決に基づいて、公訴を維持するために検察官の職務を行います。具体的には、公判での立証活動や証拠の提出、被告人への尋問などを行います。ただし、捜査に関しては、検察事務官や司法警察職員に対する捜査の指揮は、検察官に嘱託して行わなければなりません。

また、指定弁護士が公訴提起した事件が公訴棄却となった場合でも、法律上は再度起訴することができます。

手当について

指定弁護士に支払われる手当は、事件の審級ごとに定められており、裁判所が決定します。具体的には、一審では50万円以上315万円以下、上訴審では19万円以上315万円以下の範囲で支払われます。また、検察官の職務として出張した場合には、国家公務員旅費法に基づいて、検事に支給される旅費と同額が、手当に加算されます。

検察官としての権限

指定弁護士は、検察官と同様に、以下のような権限を持ちます。

被疑者の逮捕

罪を犯した疑いがある相当な理由がある場合、裁判官が発付した逮捕状に基づき、被疑者を逮捕することができます。逮捕後は、速やかに犯罪事実の要旨と弁護人を選任できる旨を告知し、弁解の機会を与えなければなりません。また、留置の必要がないと判断した場合には、直ちに釈放する必要があります。留置の必要がある場合は、逮捕後48時間以内に裁判官に勾留を請求する必要があります。

強制捜査

犯罪捜査に必要な場合、裁判官が発付した令状に基づき、差押、捜索、検証を行うことができます。身体検査については、別途、身体検査令状が必要となります。

証人尋問

捜査において、重要な知識を持つと判断される者が、取り調べに対して出頭や供述を拒否した場合、第一回公判期日前に限り、裁判官に証人尋問を請求することができます。正当な理由なく出頭しない証人に対しては、過料や費用の賠償を命じることができ、さらに、罰金や拘留に処することも可能です。また、召喚に応じない証人を勾引することもできます。

取り調べ費用

指定弁護士が取り調べを行った者や、嘱託した鑑定人、通訳人、翻訳人には、旅費、日当、宿泊料、鑑定料、通訳料、翻訳料を支給することができます。また、鑑定、通訳、翻訳に必要な費用を支払ったり、償還したりすることも可能です。

まとめ

指定弁護士は、検察官の職務を代行する重要な役割を担っています。その選任から職務遂行、手当に至るまで、法律や制度によって厳格に定められています。指定弁護士の存在は、検察官による不起訴処分の妥当性をチェックし、より公正な刑事裁判を実現する上で不可欠です。

関連項目

弁護士
検察官
検察審査会
付審判制度

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