指物師ギルドの祭壇画 (マサイス)

『指物師ギルドの祭壇画』は、初期フランドル派の巨匠クエンティン・マサイスが、1511年頃に油彩で板上に描いた三連祭壇画です。この作品は、指物師ギルド（現在の家具職人の組合）が、樽製造者ギルドから独立した1497年以降に、新たなギルドのために制作されました。別名として、『受難の祭壇画』や、両翼に描かれた聖人たちの殉教から『殉教の祭壇画』とも呼ばれています。祭壇画の中央パネルは、アリマタヤのヨセフとニコデモが、聖母マリアの腕に抱かれるキリストの亡骸を哀悼する場面を描いています。両翼パネルには、それぞれ洗礼者聖ヨハネの斬首と、福音書記者聖ヨハネが油で煮られるという、2人の聖人の殉教の様子が描かれており、大工職人の守護聖人として、両翼パネルの外側にもグリザイユ（灰色画法）で表現されています。

制作の経緯

指物師ギルドは、設立当初から祭壇画制作を計画しており、まずルーヴェンで活動していた彫刻家、ペーテルツェールスとヤン・ファン・ケッセルに依頼を試みましたが、これは実現しませんでした。1503年にアントウェルペン（現在のベルギー・アントワープ）の別の彫刻家にも依頼しましたが、これも失敗に終わります。最終的に1508年、マサイスに依頼が回ってきました。マサイスは当時、樽製造者ギルドのためにキリスト降架の祭壇画を制作しており（現在は失われています）、その実績が評価されたと考えられます。指物師ギルドとマサイスの間の契約書は現存しており、画家への報酬として300ギルダーが支払われることが定められていました。1511年8月26日に絵画が納品された際、マサイスの最初の妻との間に生まれた子供たち、クィンテンとカタリーナのための基金設立が決定されました。

作品の詳細

中央パネルには、アリマタヤのヨセフが聖母マリアにキリストの遺体の埋葬許可を求めに来た場面が描かれています。聖母マリアは福音書記者聖ヨハネに支えられ、膝をついて悲嘆に暮れています。前景では、ヨセフがキリストの頭部の血の付いた肉片を摘み、ニコデモがキリストの遺体を脇の下から持ち上げようとしています。背景には、ゴルゴタの丘、わずかな木々、十字架、そして磔にされた盗賊が見えます。右翼パネルには、福音書記者聖ヨハネが沸騰した油釜に投げ込まれるという、非常に残酷な場面が描かれています。左翼パネルには、サロメが洗礼者聖ヨハネの首をヘロデ王に差し出す場面が描かれています。

マサイスは、この作品に登場する人物の容貌を、当時アントウェルペンで見かけた異国の人々の姿から着想を得たと考えられています。

歴史

この祭壇画は、設置から19年後に教会を襲った大火、そして1566年のイコノクラスム（偶像破壊運動）の波を生き延びました。スペイン王フェリペ2世やイングランド女王エリザベス1世も作品の購入を希望しましたが、画家のマールテン・デ・フォスがアントウェルペン市議会に作品の海外流出を防ぐため購入を働きかけ、実現しました。作品は短期間市議会ホールに展示された後、1590年に聖母大聖堂内のベスネイデニス礼拝堂の祭壇に設置されました。フランス革命中には、アントウェルペン在住の画家ウィレム・ヘレインスが、作品が競売にかけられてフランス占領軍によってパリに持ち去られるのを阻止しました。1798年に作品はドゥー・ネット中央学院に移されましたが、その際、絵画、大理石の基部、そして2つの銅の覆いは、フランスの検査官によって600フロリンと評価されました。1810年、作品はドゥー・ネット中央学院から現在のアントワープ王立美術館の所蔵となりました。現在でも、この作品はマサイスの代表作として、その卓越した表現力と歴史的な価値が評価され続けています。

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