授刀舎人

授刀舎人についての詳細

授刀舎人（たちはきのとねり）は、奈良時代の8世紀に創設された武官の一種です。この官職は、左右近衛府の舎人の前身であり、授刀・帯剣舎人とも称されました。授刀舎人の設置は、元明天皇即位直後の慶雲4年（707年）に始まり、主に皇嗣の護衛を目的としていました。

当初、授刀舎人は授刀舎人寮に属していましたが、年月が経つにつれてその地位は変化していきました。特に、神亀4年（727年）10月以降はその名称が記録から消え、翌年には中衛府が新たに設置され、授刀舎人も中衛舎人に移行したと考えられています。そのため、授刀舎人という呼称は一時的に使われなくなったのです。

しかし、この官職は再び重要性を増し、天平18年（746年）に「騎舎人」と改名されて再設置されました。騎舎人は聖武天皇の警護を目的とし、特に行幸や都の遷移に関連して設立された騎兵部隊でした。この時期、聖武天皇は平城京に帰った後に何度か行幸し、この間に危険が迫っていたことが伺えます。特に、橘奈良麻呂の動静は、政局において重大な意義を持っていました。

興味深いことに、後に歴史的な文書の分析から、天平18年の授刀舎人再設置は、聖武天皇の皇太子、阿倍内親王（後の称徳天皇）の護衛を目的としていたと考えられています。これにより、授刀舎人は単なる士族としての地位を超え、特定の皇族の安全を守る重要な存在となりました。

第二次授刀舎人は、聖武上皇の死後である天平勝宝8年（756年）に400人の定員で再編成され、その名簿は中衛府が管理することになりました。授刀舎人は中衛舎人とは異なる存在とされ、その役割は明確にされていました。その後、715年には授刀衛が設立され、授刀舎人はこの新たな官職に所属することとなりました。授刀衛が近衛府に編成される天平神護元年（765年）の際には、授刀舎人は近衛舎人としての役割を引き継ぎ、皇室を守る重要な役割を果たすことになります。

授刀舎人の形成、再編成、役割の変遷は、奈良時代の政治情勢や皇太子の地位に対する意識を反映しており、その後の日本の皇位継承問題や皇宮の安全保障に大きな影響を与えることとなりました。このように、授刀舎人は単なる武官ではなく、国家の安全保障と皇位継承を支える重要な存在として歴史に名を刻んでいます。

参考文献

• - 角川第二版日本史辞典（1966年）
• - 岩波日本史辞典（1999年）
• - 国史大辞典（1980年）
• - 続日本紀：新日本古典文学大系（1990年、1992年、1995年）

授刀舎人は、現在のような警護官や近衛兵といった職業の起源ともいえるものであり、奈良時代の特異性を示しています。その存在が後の皇宮警備や皇位継承の問題にどのように作用したのかを知ることは、歴史の理解を深めるために欠かせません。

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