摂取寺

摂取寺（せっしゅじ）

摂取寺は、熊本県宇城市小川町北部田に位置する浄土宗の寺院で、その山号は海雲山です。この寺院は、元禄4年（1691年）の4月9日に開基されました。開基は、肥後国八代町の荘厳寺の住職である准誉によるものです。

寺院の歴史

開基以前においても、摂取寺は長い歴史を有しています。特に応仁の乱後の戦国時代には、寺院は戦乱によって大きな被害を受けました。天文年間から弘治年間にかけて、摂取寺は兵乱により大破しました。しかし、寛文年間（1624年～1644年）には再建されたとの伝承があります。興味深いことに、阿蘇家の古文書には「天文19年（1550年）の12月8日、阿蘇惟豊が益城郡内の守山のうち、摂取寺3町を宛てがっている」との記録が残されています。このことから、摂取寺が古くから地域に密接に関わっていたことが窺えます。

また、一切経で知られる黄檗宗の禅僧・鉄眼道光について書かれた「鉄眼禅師行実」には、彼が寛永19年（1642年）に13歳の時から17歳までの間、摂取寺の海雲和尚のもとで仏教の学習をしていたとの記録があります。このように、開基以前から摂取寺では僧侶による宗教活動が行われていたことが示されており、寺院の存在は少なくとも500年以上にわたるとされています。

行事と文化財

摂取寺では、定期的にさまざまな行事が行われています。

• - 1月25日: 法然上人の御忌会（ぎょきえ）
• - 2月15日: お釈迦様の涅槃会（ねはんえ）
• - 4月8日: 花まつり
• - 8月25日: お施餓鬼会（せがきえ）
• - 9月18日: 清水観音祭り

これらの行事を通じて、地域の人々が集い、伝統が受け継がれています。また、摂取寺の境内には、狩野幸信による涅槃会図や福仏恩春による来迎仏絵図といった重要な文化財も存在し、訪れる人々に深い感銘を与えています。

境内の特徴

摂取寺の境内には、清水観音堂もあります。この堂には、肥後国藩主細川家の四人（2代忠興公、3代忠利公、4代光尚公、宇土支藩初代行孝公）の位牌が納められており、細川家との深い関係性を示しています。摂取寺は、寺院としてだけでなく、地域の歴史や文化とも密接に関連した存在です。

参考文献

• - 下益城郡教育支会編纂 『下益城郡誌』 臨川書店、1922年、466頁
• - 日本歴史地名大系44 『熊本県の地名』 平凡社、1985年、644頁
• - 角川日本地名大辞典編纂委員会編『角川日本地名大辞典43 熊本県』角川書店、1987年、1479頁

摂取寺は、その歴史的価値、地域の人々との結びつき、そして豊かな文化財により、訪れる人々にとって特別な場所となっています。

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