摩訶衍

摩訶衍（まかえん）

摩訶衍（マハーヤーナ、蔵語：hwa shang ma hā ya na）は、8世紀の唐代に活躍した仏教僧であり、特に禅宗の僧侶として知られています。彼は吐蕃（現在のチベット）に招かれ、禅宗の教えを広める役割を担いました。

生涯と業績

786年頃、敦煌が吐蕃に陥落した時期に、吐蕃王ティソン・デツェンは摩訶衍を敦煌から連行し、自国での仏教布教を命じました。当時、吐蕃ではインド仏教系の僧侶たちが勢力を持っており、サムイェー寺を中心に仏教の教義を確立しようとしていました。しかし、彼らは摩訶衍の禅の教えに対して疑念を抱き、激しく批判しました。特に、シャーンタラクシタ（寂護）の死後、その傾向は強まり、文書による論争が繰り返され、ついには禅宗の禁教へと至りました。

摩訶衍は、無念・無想・無作意という、一切の思念や作為を排した状態での悟りを説きました。彼の教えは一部の人々に受け入れられ、791年には皇后（没盧氏）を出家させるほどの影響力を持っていました。しかし、インド仏教を奉じる勢力からの反発は根強く、794年には一時的に禁教が解かれたものの、状況は好転しませんでした。

事態を打開するため、ティソン・デツェン王はインドからカマラシーラ（蓮華戒）を招き、サムイェー寺のチャンチュプ院において、摩訶衍との公開討論を行わせました。この論争において、カマラシーラは摩訶衍を論破し、妙観察智を捨てる無念の禅は誤りであると断じました。これにより、摩訶衍は敦煌へと去り、インド仏教の正統性が確立され、主導権を握ることとなりました。この論争は「サムイェー寺の宗論（中国語: 拉薩法諍）」として知られています。

参考文献

『頓悟大乗正理決』（794年）

関連項目

サムイェー寺の宗論

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