サムイェー寺の宗論

サムイェー寺の宗論

サムイェー寺の宗論は、8世紀末にチベットのサムイェー寺を舞台に行われた、インド仏教と中国仏教の間の重要な宗教論争です。この論争は、チベット仏教の将来の方向性を決定づけることになりました。

概要

チベット側の史料によれば、宗論はサムイェー寺でチベット王の御前で両派が議論し、インド側が勝利したとされています。一方、中国側の史料では、書簡による質疑応答が1年以上続き、中国側が勝利したとされています。このように、両側の記録には食い違いが見られます。

経緯

摩訶衍の渡来

787年、吐蕃が敦煌を占領した際、摩訶衍禅師がチベットに連行されました。792年、ティソン・デツェン王の勅命により、摩訶衍はチベットでの布教を許可されます。彼の教えは多くの支持を集め、ケク・リンポチュのような高僧を弟子に持ち、皇后や大臣夫人などの信者も獲得しました。彼女たちは出家するほどの熱心さだったと伝えられています。

宗論の緒戦

摩訶衍の活動に対し、旧来のインド僧徒は異議を唱え、宗教討論が開催されることになりました。討論は数回に及びましたが、摩訶衍側が勝利を収めます。しかし、その後もインド僧からの讒言や、大臣と連携した画策が続き、摩訶衍の門弟らは抗議活動を展開しました。その結果、794年に摩訶衍の活動を公認する勅命が発せられました。

カマラシーラの登場

劣勢に立たされたインド僧は、インドからカマラシーラを招きました。これにより、論争の主体はカマラシーラと摩訶衍の間へと移行します。最終的にカマラシーラが勝利し、797年頃には摩訶衍は敦煌に追放されたとされています。この結果、インド仏教がチベットにおける仏教の正統と認定され、その後のチベット仏教の流れが決定づけられました。

サムイェー寺の宗論は、チベット仏教史における重要な転換点であり、その後のチベット仏教の発展に大きな影響を与えました。

参考文献

頓悟大乗正理決（王錫、794年）
プトン仏教史（1322年）

関連項目

サムイェー寺
チベット仏教
牛李の党争
会昌の廃仏

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