撰銭

撰銭とその歴史的背景

撰銭（えりぜに、えりせん、せんせん）は、日本の中世後期において通貨の支払い時に、品質の劣る銭貨を避ける行為を指します。この現象は、支払決済の場で生じたため、深刻な経済問題を引き起こしました。

撰銭の起源

日本における撰銭の最古の記録は、和銅7年（714年）9月20日に施行された撰銭禁止令にさかのぼります。当時は、和同開珎が発行された時期に合わせて、撰銭行為が行われていたと考えられています。この禁止令は、不良銭に対する撰銭や銭貨の偽造を禁じるものでしたが、実際のところ、その詳細は不明です。

室町時代中期に入ると、日本の貨幣経済が発展を始め、中国から輸入された中国銭が流通するようになりました。しかし、流入した銭貨の中には、私的に鋳造された粗悪な銭貨も多く含まれており、これによって撰銭の問題が生じました。このような私鋳銭は、正式には通貨としての信用を欠き、一般には評価が低く、鐚銭（あくせん）として知られました。

鐚銭の問題

室町時代後期には、明からの銅銭輸入が続いたものの、大部分は質の高い宋銭や一部の明銭で、低品質の私鋳銭は避けられることが多かったです。これにより、撰銭が引き起こすトラブルが頻発し、時には撰銭を巡って暴力事件にまで発展しました。

特に、応仁・文明の乱末期には、大内家や細川家などの権力者が撰銭を制限するために撰銭令を発令し、円滑な貨幣流通を図ろうとしました。民衆の間では依然として撰銭を持つ意識があったため、裾野まで波及する問題となったのです。また、明の海禁政策の影響で銅銭の流入も減少し、国内の通貨流通が不安定になりました。

統治と撰銭の解決

織田信長や豊臣秀吉、江戸幕府など、強力な中央政権の成立と共に撰銭の問題は徐々に解消に向かいました。特に、織田信長は1569年から撰銭令を施行し、品質によって銭貨を3つの段階に分類し、流通を管理しました。江戸幕府も安定した質の寛永通宝を発行し、私鋳銭を禁止することで、撰銭問題に対処しました。

時代背景と経済の影響

撰銭は、皇朝十二銭の廃止以降に通貨不足が続いた時代に発生しました。最初は布貨が代替通貨として使われましたが、宋との貿易が正常化するにつれ、大量の宋銭が流入してきました。その結果、糾弾された銭が注目を浴び、徐々に撰銭が深刻な経済問題として浮上したのです。

近年の研究では、明国内での銀の普及が銅銭の信用を低下させ、これが日本の撰銭問題にも影響を及ぼしたと考えられています。撰銭の問題は、当時の経済情勢と密結びついており、単なる通貨の質の問題にとどまりませんでした。

まとめ

撰銭は、日本中世後期の経済動向における重要な現象であり、その解決には時間がかかりました。寛永通宝の発行と統治機関の安定をもって、ようやく撰銭の問題は緩和されました。撰銭の歴史は、貨幣の品質と流通の重要性を物語るものでもあり、経済発展に大きな影響を与えたことは間違いありません。

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