改三分定銀

改三分定銀（あらためさんぶさだぎん）とは

改三分定銀は、幕末期に、アメリカ総領事ハリスの提案によって、日本国内で三分銀として通用させるために洋銀に極印が打たれた銀貨です。この貨幣は、当時の複雑な国際関係と国内経済の混乱を象徴する出来事の中で生まれました。

略史

1856年（安政3年）9月、下田御用所にて、日本貨幣と西洋貨幣の交換比率に関する交渉が行われました。幕府は、ハリスの主張を受け入れ、1ドル銀貨を天保一分銀3枚と交換するという合意に至ります。これは、1ドル銀貨の量目が、当時の日本の貨幣である天保一分銀の約3倍に相当することに基づいています。

しかし、この交換比率には大きな問題がありました。日本側は1859年（安政6年）6月1日に、洋銀の半分の量目を持つ安政二朱銀を発行し、金銀比価を是正しようと試みました。また、1ドル＝一分となるように誘導しようとしました。しかし、安政二朱銀は貿易港でのみ通用し、国内では量目の少ない一分銀に両替しなければ使用できませんでした。そのため、国内全域で通用しない安政二朱銀を渡された外国人大使らは、1ドル銀貨の価値を1/3に引き下げる政策に強く反発し、条約違反であると抗議しました。結果として、安政二朱銀の発行はわずか22日間で中止に追い込まれ、1ドルを三分として交換せざるを得なくなりました。

外国人大使らは、小判を得るために洋銀を大量に一分銀に両替しようとしました。これにより、貿易港周辺では一分銀がたちまち不足するという事態が発生しました。幕府は一分銀の増鋳を要求されましたが、洋銀から一分銀への両替に消極的でした。江戸城本丸の火災などを理由に交換停止を申し出るなど、一分銀不足を解消しようとはしませんでした。大使らはこの状況に不満を募らせました。

そこで、ハリスは一分銀の増産が困難であるならば、洋銀に「三分」の極印を打って、日本国内で三分の価値として通用させることを提案しました。幕府は渋々この要求を受け入れ、1860年（安政6年）1月21日より、銀座から派遣された役人によって、国内に流入していたメキシコ8レアル銀貨などに「改三分定」の極印が打たれ、流通することになりました。

しかし、国内では「双替（そうがえ）」という慣習があり、外国銀貨は地金として扱われ、国内銀貨への交換時に低く評価されていました。そのため、両替商に持ち込んでも二分二朱程度の価値にしかならず、「三分」と額面を強制しても受け取りを拒否される事態が発生しました。結局、極印打ちは1860年（万延元年）5月12日に打ち切られ、わずか半年足らずで中止となりました。

現存する改三分定銀は、メキシコ8レアル銀貨に極印が打たれたもののみで、1859年銘までのものが確認されています。極印の文字の大きさによって「大字」と「小字」の2種類が存在し、「小字」の方が現存数が多いとされています。

また、「改三分定」の極印が打たれる直前の1859年（安政6年）9月には、外国銀貨の量目に応じて漢数字が打たれたとされています。アメリカ銀貨、ロシア銀貨、メキシコ銀貨などに数字の極印が打たれたものが現存しており、例えば7匁2分のメキシコ8レアルには「七二」と打たれたものが存在します。

まとめ

改三分定銀は、幕末の混乱期における通貨政策の失敗を象徴する貨幣と言えます。外国との貿易において生じた貨幣価値の不均衡を解消しようとした幕府の試みは、国内の慣習や経済状況によって阻まれ、短期間で終焉を迎えました。この貨幣は、当時の国際情勢と国内経済の複雑な関係を理解するための貴重な資料となっています。

参考文献

(参考文献の情報は提供されていません。)

関連項目

* 幕末の通貨問題

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