改新の詔

改新の詔（かいしんのみことのり）

改新の詔は、645年に発生した乙巳の変を契機に、新たに即位した孝徳天皇によって発せられた文書であり、大化の改新における重要な施政方針を示しています。この詔は、当時の国家体制の改革を目的としており、特に中央集権的な政治体制を確立するための方針が詳細に述べられています。詔の内容は『日本書紀』に記録されており、そこでは公地公民制や租庸調の税制、班田収授法の確立について言及されています。

大化の改新の背景

645年、蘇我本宗家を排除した乙巳の変後、孝徳天皇は新たな政治体制を構築しようとしました。大化の改新は、従来の豪族連合に依存した国家体制を改め、土地・人民の私有を廃し、天皇を中心とした中央集権的国家を目指すものでした。この新たな方向性は、変革を求める時代の要請の反映でもありました。詔は大きく4つの主文から成り、各主文には副文（凡条）が付されています。しかし、『日本書紀』に記された詔の内容が後の編纂者によって修正されたことが明らかになっています。

改新の詔の各条の解説

第1条

第1条は、天皇や豪族による土地・人民の私有を廃止し、一元的な統治体制を確立することを示しています。これまでの土地制度では、土地や人民が天皇や豪族によって私的に支配されていましたが、改新の詔はこれを公地公民制へと転換しようとしました。しかし、実際には豪族の土地所有は長らく続き、一概に私有が廃止されたとは言えません。公地公民制の存在にも疑問が生じています。

第2条

第2条では、中央政治の中枢となる首都の設置や、地方行政組織の整備について述べています。白雉元年には難波長柄豊碕宮に遷都が実現し、畿内に首都を置くことが定められました。また、地域の支配は地方豪族から中央政府へと移行し、これにより地方豪族の力が抑制され、中央集権へと繋がっていきました。そこで新しく設置された評は、それまで独立していた豪族の支配を制限し、律令制の前身ともなります。

第3条

第3条は、戸籍や計帳を用いて人民を管理すること、また土地制度に関する班田収授法についての内容が含まれています。しかし、これらの語句は後の大宝令に基づくもので、実際には大化の時代には戸籍や計帳の作成は実施されなかったと考えられています。それでも、何らかの形で人民を把握するための調査は行われたと思われます。

第4条

第4条では、新しい税制の方向性を示しています。特に田の調について、その賦課基準が田地面積に基づくもので、後の律令制における田租につながる形になっています。土地に基づく租税制度の考え方は、中央集権的な国家体制において必要不可欠な要素であったと言えるでしょう。

日本書紀の潤色とその影響

1967年に藤原京で発見された木簡によって、改新の詔が奈良時代に書き換えられたことが確認され、『日本書紀』の記載が必ずしも正確でないことが示されました。このため、詔の内容とその実践は、後世の歴史解釈に大きな影響を与えました。大化の改新を受けた政策は時代を超え、天智期や天武期の改革にも繋がる重要な施策であり続けたのです。今後の律令制への流れや、地方社会への影響についても検討が進められています。歴史的な意義を持つ改新の詔は、天皇中心の国家運営を目指す第一歩であったことは間違いありません。

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