将軍後見職

将軍後見職の歴史とその役割

将軍後見職（しょうぐんこうけんしょく）は、江戸時代の幕末期に新設された重要な政事総裁職の一つであり、京都守護職と共に江戸幕府の三要職とされていました。この役職は、政治における権力の調整や運営を担う役割を持っていましたが、実情は複雑であったと言えます。

設立の背景

この職が新設されたのは、安政5年（1858年）のことです。この年、若き徳川家茂が14代将軍として就任しました。彼の年齢はまだ若く、政治的な手腕が求められるなか、前将軍・徳川家定の遺命と、歴代将軍における先例を受けて、田安家の徳川慶頼がこの役職に選ばれました。しかし、この任命は、大老井伊直弼の意向による形式的なものに過ぎず、実際の権限は薄いものでした。

権力の移転

初期の頃、将軍後見職にあった慶頼は、実質的な権力を行使することはなく、形式的な存在感を持つにとどまっていました。しかし、文久2年（1862年）に入ると、時代の流れが大きく変わります。朝廷内で幕府に対する不満が高まり、特に井伊派に対する処分を求める声が挙がり始めました。この背景の中で、「家茂の成人」を理由に慶頼は後見職を退くことになりました。

その後、朝廷から徳川慶喜の任命を求める勅諚が下されました。御三卿一橋家の慶喜は、その後、正式な役職として将軍後見職に就任することになりました。この新設された職は幕府体制の中でより重要な位置を占めることとなりました。慶喜はその後、将軍の後見役として活動を開始し、幕府の政治に関与することとなります。

廃止とその後

しかし、政治が目まぐるしく変わる時代の中で、慶喜が元治元年（1864年）3月に禁裏守衛総督に転任した際、将軍後見職は廃止されることとなります。このことは、幕府の権力構造の変化を示しており、従来の形式や権限がどれほどもはや通用しなくなっていたことを意味しています。

このように、将軍後見職は非常に短命な役職であったものの、幕末の政治的な変遷を象徴する重要性を持っていました。若き将軍家茂の下で新たに設けられたこの役職は、家茂とその側近たちの政治的な背景を反映し、また、慶喜の任命により、幕府が朝廷からの信任を求めた様子が明らかになります。これにより、将軍後見職は幕末の政治の迷走を象徴する重要な役割を果たしたと評価されています。

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