政治経済論

政治経済論

ジャン＝ジャック・ルソーによる『政治経済論』は、1755年に発表された重要な政治経済学の論文であり、フランスの著名な百科全書の一部として掲載されました。本著作は、ルソーが提唱した「一般意志」という概念を初めて用いた作品であり、彼の思想がその後の『社会契約論』に至るまでの道筋を示しています。この論文は、国家がどのように運営されるべきか、またその過程で発生する不平等に対してどのような解決策があるかという問題を中心に据えています。

政治経済(論/学)の語義

ルソーが導入した「政治経済」という語は、もともとギリシャ語の「オイコノミア」に由来し、家庭の管理から派生して国家の運営にまで及ぶ多義的な概念を持っています。このため、政治経済は家族経済と国家経済を区別するための用語として利用され、後に「一般経済」や「政治経済」として学問的に発展していきました。この分類は、ルソーの思想の中で「特殊意志」と「一般意志」の違いにまで結びついています。

古典派経済学における用法

1720年代から1830年代にかけての経済学の黎明期において、「政治経済」という用語は、アダム・スミスやカール・マルクスなどの著作に見られるように、経済学全般を指すコンセプトとして普及していました。しかし、近代的な意味での経済学の定義が整うにつれ、この概念はその範囲を狭められ、今では「エコノミー」という用語は経済現象そのものを意味することが一般的となりました。

本書における「政治経済論」

ルソーの『政治経済論』は、単なる経済学の分析にとどまらず、国家の効果的管理や運営に関する具体的な考察が展開されています。彼は、法律や教育、徴税の観点から、公共善をもたらすための方法を探求し、特に「一般意志」がどのように国家運営に貢献するかを考察しています。このため、ルソーの政治経済論は、実質的には「政策論」や「徴税論」とも言える部分が強調されています。

作品の構成

本作は、序文をはじめ、複数の部から構成されています。序文では、政治経済と家政の違い、国家と家族の関係、主権や政府の役割について論じられています。

1. 第1部では、一般意志と法律の立法、執行の関係、そして政府の権威と市民の自由の両立が語られます。
2. 第2部では、一般意志と道徳、祖国愛や財産の不平等の禁止、公教育の重要性が議論されます。
3. 第3部では、国家の財産、市民の所有権、労働、徴税の観点から国家経営について述べられています。

内容の核心

ルソーは前作品『人間不平等起源論』で不平等の問題を考察した後、その解決方法として本作では具体的な政策や実践的なアプローチを示しています。特に、自然法に基づく「一般意志」を理想とし、社会的不平等を是正しつつ、効果的な国家運営を実現するための方法を提案しています。

日本語訳

この作品は日本語にも訳されており、いくつかの異なる版があります。代表的なものとして、河野健二訳の『政治経済論』があり、1951年に岩波文庫から出版されています。また、阪上孝訳による『ルソー選集 7』や『ルソー全集 5』も後の研究に役立つ貴重な資料です。

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