文室巻雄

文室巻雄（ふんやのまきお）は、平安時代前期の貴族で、中納言・文室綿麻呂の九男として生まれました。官位は従四位上・相模守にまで昇り、武人としても名を馳せました。

生涯

巻雄は、仁明朝において皇太子・道康親王（後の文徳天皇）の帯刀舎人として仕え始めました。道康親王が即位すると、仁寿3年（853年）に相模掾に任ぜられ、その後、右兵衛少尉、右兵衛大尉と武官としてのキャリアを積みました。天安元年（857年）には播磨大掾に転任し、清和朝に入ると右衛門少尉に任じられ、貞観元年（859年）には従五位下に叙爵されました。貞観3年（861年）には主殿権助に任じられ、その後も左衛門佐、左近衛権少将、左近衛少将と順調に昇進を重ねました。

貞観年間後半には、貞観9年（867年）に従五位上、貞観15年（873年）に正五位下、貞観18年（876年）には従四位下と、着実に官位を上げていきました。貞観18年（876年）に陽成天皇が即位すると、左近衛少将から伊予権守に転じ、その後は備前守、因幡権守、相模守と地方官を歴任しました。因幡権守と相模守は遙任であったとされています。晩年には、子息である房典の近江少掾への任官と引き換えに相模守を辞任しました。元慶3年（879年）には従四位上に昇叙されました。

仁和3年（887年）8月7日に78歳で亡くなり、最終的な官位は散位従四位上でした。

人物

巻雄は、幼少の頃から勇敢で力が強く、読書を好むタイプではありませんでしたが、弓馬の技術に長けており、特に騎射を最も得意としていました。身体が敏捷で意気も盛んで、昼夜を問わず武器を携えて天皇に侍り、宿衛の勤めにおいては誰よりも秀でていたと伝えられています。

巻雄の勇敢さを物語る逸話として、以下のようなものがあります。

ある時、遊びで跳躍した際、牛車の牛の頭を踏み台にして車を飛び越え、その後ろに立った。
近衛少将を務めていた際、白昼に東宮の屋根の上を狐が走っていたため、自ら屋根に駆け上がり、剣で狐を斬った。

これらの逸話からも、巻雄の並外れた武勇と勇ましい人物像が伺えます。

官歴

巻雄の官歴は以下の通りです。

承和年間：帯刀舎人
仁寿3年（853年）正月：相模掾
時期不詳：右兵衛少尉
時期不詳：右兵衛大尉
天安元年（857年）日付不詳：播磨大掾
時期不詳：正六位上。右衛門少尉
貞観元年（859年）11月19日：従五位下
貞観3年（861年）4月9日：主殿権助
貞観4年（862年）正月13日：左衛門佐
貞観5年（863年）3月28日：次侍従
貞観8年（866年）正月13日：左近衛権少将兼伊予介
貞観9年（867年）正月7日：従五位上
貞観11年（869年）2月16日：兼伊予介。12月13日：左近衛少将、伊予介如故
貞観14年（872年）2月29日：兼美濃守
貞観15年（873年）日付不詳：正五位下
貞観18年（875年）正月：従四位下。12月：伊予権守
元慶2年（878年）正月11日：備前守
元慶3年（879年）11月25日：従四位上
元慶6年（882年）2月：因幡権守。日付不詳：相模守
仁和3年（887年）8月7日：卒去（散位従四位上）

系譜

父：文室綿麻呂
母：不詳
生母不明の子女
男子：文室茂典
* 男子：文室房典

巻雄は、武人としての勇猛さと、貴族としての地位を兼ね備えた人物であったと言えるでしょう。

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