文明皇后 (前燕)

文明皇后（ぶんめいこうごう、生没年不詳）は、前燕の初代君主である文明帝慕容皝（ぼようこう）の皇后であり、鮮卑段部出身です。

生涯

段氏は慕容皝に嫁ぎ、正妻となりました。彼女は、後の前燕第3代皇帝となる慕容儁（ぼようしゅん）の実母です。337年10月、慕容皝が燕王を称して前燕を建国すると、同年11月には段氏は王后に立てられました。彼女の没年は明らかではありませんが、344年に慕容皝が代王拓跋什翼犍（たくばつじゅうよくけん）の姪を妻に迎えていることから、それ以前に亡くなったと考えられています。

352年11月、慕容儁が大燕皇帝として即位すると、段氏は文明皇后と追諡され、慕容皝の宗廟に合祀されました。これにより、彼女は前燕の皇室において重要な位置を占めることとなりました。

しかし、384年1月、慕容垂（ぼようすい）が燕王を称して後燕を創建すると、状況は一変します。慕容垂は、嫡兄である慕容儁とその皇后可足渾（かそくこん）氏の生前の行いを恨んでおり、嫡母である段氏に代えて、実母である淑儀蘭（しゅくぎらん）氏に文昭皇后（ぶんしょうこうごう）の諡号を贈り、父帝の宗廟に合祀しました。これは、後燕の皇室における正統性を主張するための政治的な措置でした。

文明皇后は、前燕の建国と初期の歴史において重要な役割を果たした女性であり、その生涯は前燕の皇室の権力闘争と密接に結びついていました。彼女の存在は、前燕から後燕へと続く激動の時代を象徴するものと言えるでしょう。

伝記資料

文明皇后に関する記述は、以下の歴史書に見られます。

『晋書』（載記）
『十六国春秋』
* 『資治通鑑』

これらの資料は、彼女の生涯や前燕の歴史を研究する上で貴重な情報源となっています。

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