斉田正子

斉田正子（さいだ まさこ、1958年9月25日 - ）は、日本を代表するソプラノ歌手の一人です。愛媛県松山市出身で、その才能を開花させ、国内外で目覚ましい活躍を遂げてきました。東京藝術大学で博士号（音楽）を取得しており、学術的な知識にも裏打ちされた深い音楽性が、彼女の歌声を特別なものにしています。夫は昭和大学医学部講師の斉田晴仁氏です。名前の表記は「齊田正子」と書かれることもあります。

経歴

愛媛県立松山南高等学校を経て東京藝術大学音楽学部を卒業。その後、同大学大学院音楽研究科オペラ専攻博士課程を修了しました。佐藤陽三、岡部多喜子、東敦子、V.ボッローニ、A.ベルトラーミ、R.エリーといった著名な指導者に師事し、声楽の研鑽を積みました。在学中には、第17回日伊声楽コンコルソに入選するなど、早くからその才能を発揮していました。

1984年から1986年の間、国際文化交流財団の奨学生としてイタリア・ミラノに留学。留学中には、パヴィア国際声楽コンクールで3位、第35回ミュンヘン国際音楽コンクール女性声楽部門で2位を受賞するなど、国際的な舞台でも高い評価を得ました。

帰国後は、東京藝術大学100周年記念オペラ『オルフェオとエウリディーチェ』のアモーレ役で出演。藤原歌劇団初のオーディションに合格し、オペラ『椿姫』のヴィオレッタ役でデビューを果たしました。この役は彼女の代表的な当たり役の一つとなり、その後も数多くのオペラで主要な役を演じています。

主な出演作品

藤原歌劇団では、『椿姫』のヴィオレッタをはじめ、日本初演となった『清教徒』のエルヴィラ、『カルメン』のミカエラ、『ラ・ボエーム』のムゼッタ、『ドン・ジョヴァンニ』のツェルリーナ、『アルジェのイタリア女』のエルヴィラなど、幅広い役柄を演じました。

新国立劇場では、『魔笛』のパミーナ、『天守物語』、新国立劇場・二期会オペラ振興会共催公演『沈黙』『光』などに出演。神奈川県民ホールでは、團伊玖磨のオペラ『ちゃんちき』に出演しました。その他、横浜シティオペラでは『魔笛』の夜の女王、『こうもり』のアデーレ、東京室内歌劇場では『霊媒』、パイジェッロ作曲『セビリアの理髪師』のロジーナ、シューベルト『女の平和』のイザベラなど、多彩なレパートリーを披露しています。

民音オペラ公演『スペードの女王』のリーザ、小澤征爾オペラシリーズ『イドメネオ』のイリア、グローブ座公演『ハムレット』のオフィーリア、モーツァルト劇場『後宮からの逃走』のコンスタンツェなど、数々の著名なオペラ公演に出演しています。

『東京の夏』音楽祭では、日本初演となった『なりゆき泥棒』のベレニーチェ、三枝成彰作曲『千の記憶の物語』の改定初演、吉松隆作曲のネオ･オペラ『セレスタ』の初演、長野オリンピック文化芸術祭参加オペラ『信濃の国・善光寺物語』にも出演するなど、現代音楽にも積極的に取り組んでいます。

教育活動

斉田正子は、演奏活動の傍ら、後進の育成にも力を注いでいます。昭和音楽大学、日本大学芸術学部などで教鞭を執り、多くの学生を指導してきました。

1988年4月 - 1994年3月 昭和音楽大学 非常勤講師
2000年4月 - 2006年3月 日本大学芸術学部 研究所助教授（非常勤）
2007年4月 - 2008年3月 日本大学芸術学部 研究所准教授（非常勤）
2008年4月 - 2018年3月 日本大学芸術学部 教授（任期制）
2018年4月 - 日本大学芸術学部音楽科教授

受賞歴

1984年 - 第19回民音コンクール第2位
1985年 - 第6回パヴィア国際声楽コンクール第3位
1986年 - 第35回ミュンヘン国際音楽コンクール第2位
1988年 - 第2回グローバル東敦子賞
1988年 - 第16回ジロー・オペラ賞新人賞
1998年 - よんでん芸術文化奨励賞
2000年 - テレビ愛媛賞21
2004年 - エクソンモービル音楽賞・奨励賞

論文

博士論文：19世紀イタリアベルカントオペラの歌唱について：狂乱の場を中心にして＋（演奏）ヴィンチェンツォ ベッリーニ 第2幕エルヴィラのアリア「ここであの方の優しい声が」他

所属

日本オペラ振興会（藤原歌劇団）
日本演奏連盟
日本声楽発声学会
音声言語医学会

斉田正子は、その卓越した歌唱力と豊かな表現力で、多くの聴衆を魅了してきました。また、教育者としても、次世代の音楽家たちの育成に貢献しており、その功績は高く評価されています。

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