斜縁神獣鏡

斜縁神獣鏡について

斜縁神獣鏡（しゃえんしんじゅうきょう）は、特有の形状を持つ日本の銅鏡の一種で、その縁が緩やかに内側へ傾斜しているのが特徴です。この鏡は、主に古墳時代前期の古墳から出土し、三角縁神獣鏡よりも古い時代に属する鏡式であると考えられていますが、その評価や研究の進展に伴い、意見は分かれています。

定義と特徴

銅鏡研究者・實盛良彦によると、斜縁神獣鏡は以下のような特徴を持っています。鏡の内区には、間隔をあけた乳状の区切りにより、二神と二獣、あるいは二神と四獣が求心的に配置されます。この二神は侍仙を伴い、外区には鋸歯文や波文が多く見られます。また、銘文の大半は「吾作明竟」で始まります。斜縁は三角縁よりも低く、平縁よりも高く盛り上がっており、鏡の直径は10cmから18cmと小型です。最外周には外周突線を持ち、2009年の時点でこれらの鏡は53面確認されています。このうち、日本国内で見つかったものは43面で、主に近畿地方から山梨、大分にまで広がる分布を示します。一方、国外では中国山東省に3面、朝鮮半島の楽浪郡に5面が確認されています。

研究史

銅鏡の研究は初期段階で、斜縁神獣鏡は三角縁神獣鏡と区別されていませんでした。1897年には三宅米吉が斜縁の傾斜について言及しましたが、1920年には富岡謙蔵が両者を同一視しました。後に、後藤守一が縁の形状に注目し、類似の銘文が多いことを指摘しつつも、違う鏡式と分類しました。1921年、梅原末治が三角縁との違いを述べ、後にさらにその見解を進展させました。樋口隆康が最初に「斜縁神獣鏡」という名称を用いたのは1979年であり、その後、村松洋介と實盛良彦がこの鏡の型式を細分化し、年代を定める研究が進められました。

評価

斜縁神獣鏡の評価は一定ではなく、馬渕一輝はこの鏡式が同時代の銅鏡の中でも特に評価が分かれていると述べています。岡村秀典は、鏡の制作背景として、後漢の徐州地域の影響を指摘し、斜縁神獣鏡を徐州系の鏡として扱い、その製作時期を3世紀前半と見なしています。この鏡には弥生時代の特徴も残っており、日本への流入時期を弥生時代終末期にさかのぼる考えもあります。実盛は、斜縁神獣鏡を240年から265年の間に製作された鏡として位置づけ、そのクリエイティブな模倣技術についても触れています。研究者たちは、この鏡が画像鏡や画文帯神獣鏡の要素を融合させたものであり、楽浪から日本に伝わったと考えています。

型式分類

斜縁神獣鏡はおおきく二つのグループに分類されます。村松洋介は、複線波文の違いから前後の二期に分かれるとの見解を示していますが、實盛は文様や銘文の違いから、製作者集団も異なると主張しています。製作年代については、銘文や類似する鏡式から系譜が推定され、實盛は第1段階が3世紀前半から始まり、第2段階が3世紀中盤にかかるとしています。

このように、斜縁神獣鏡は日本の古代文化を理解するための重要な資料であり、多角的にその機能や起源、影響を探ることが求められています。

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