新アニオ水道

新アニオ水道 (Aqua Anio Novus)

新アニオ水道は、古代ローマ帝国の首都ローマに水を供給するために建設された、重要な水道（ローマ水道）の一つです。その建設事業は、紀元38年に皇帝カリグラの指示によって開始され、約14年の工期を経て、紀元52年に後継の皇帝クラウディウスのもとで完成しました。

この水道は、同時期に建設が進められていたクラウディア水道と密接な関係にありました。二つの水道は多くの区間で並行しており、特にローマ市街地へ向かう最終部分では、一つの壮大な水道橋構造物を共有しました。この際、下段をクラウディア水道が、上段を新アニオ水道が利用するという形で配置されました。新アニオ水道の完成により、紀元前269年から稼働していた既存のアニオ水道は、区別のために「旧アニオ水道」と呼ばれることになります。

水源と水質

新アニオ水道の水源は、ローマから東へ約87km離れたアニオ川の上流域に求められました。しかし、建設当初の取水地点から供給される水は、濁りや色度が高く、利用前に沈殿池での浄化が不可欠でした。この水質問題を解消するため、後の皇帝トラヤヌスの時代に水源が変更され、より上流にあり、かつて皇帝ネロが築いた三つのダム湖からの取水に切り替えられました。これにより、より安定した水質の供給が可能となりました。

新アニオ水道によって供給された水量は非常に豊富でした。フロンティヌスの記録によれば、一日あたり約18万9520立方メートルの水が供給されたとされています。

規模と構造

フロンティヌスの記録によると、新アニオ水道の総延長は約86.88kmに及びました。このうち、およそ72.96kmは地下に掘られた導水路が占め、残りの約13.91kmが地上部分で構成されていました。

特に、ローマから約10km（7マイルストーン）より内側の区間では、水道は完全に地上構造となります。この地上部分のうち、約0.90kmはトンネルや地上の構築物内を通り、約9.61kmは先述の通り、大規模なアーチを持つ水道橋の上段を利用して水が運ばれました。

経路と終点

アニオ川上流で取水された水は、長い導水渠を経てローマ市へ向かいました。ラティーナ街道沿い約7ローマ・マイル地点には濾過施設が設けられ、水質浄化が行われました。その後、水道橋の上段を通り、ローマ市内のエスクイリーノの丘にあるミネルウァ・メディカ神殿近くに到達しました。

最終的に、新アニオ水道の水は、現在のヴィットーリオ・エマヌエーレ2世広場内にあったとされる大規模な貯水槽（Castellum Aquae）に集められ、そこから市内の各地域へと分配されました。

建設目的と水質

紀元1世紀のローマは、急速な人口増加により、飲料水のみならず、豪華な私邸や公共浴場、庭園などで使用される観賞用の水（修景用水）の需要も増大していました。新アニオ水道は、主に飲料水を供給するクラウディア水道とは異なり、こうした修景用水、すなわち噴水や人工池などに水を供給することを主な目的として計画、建設されました。

そのため、水源の水質については、飲料水ほど厳密さが求められなかったと考えられます。当時のローマ水道の中で最も水質が優れていたとされるマルキア水道や、次に評価の高かったクラウディア水道と比較すると、新アニオ水道の水質は劣るとされていました。

記念碑文

新アニオ水道の完成を記念する重要な証拠として、マッジョーレ門に刻まれた碑文が残されています。この碑文は、皇帝クラウディウスが私財を投じて、クラウディア水道と新アニオ水道という二つの大規模な水道をローマ市に導いた功績を称えるものです。

新アニオ水道は、古代ローマの高度な土木技術と、増大する都市の需要に応えるためのインフラ整備への注力を示す好例であり、その遺構の一部は今日でもローマ市近郊で見ることができます。

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