新田義宗

新田義宗：波乱の生涯を辿る武将

新田義宗は、南北朝時代を駆け抜けた武将、新田義貞の三男として知られています。母は義貞の正室、小田真知の娘です。誕生年は諸説ありますが、幼少期からその存在感を示しました。6歳にして昇殿を許されたという逸話は、将来を嘱望された証左と言えるでしょう。

父・義貞の戦死後、義宗は越後地方の新田一族に保護され、成長を遂げたと考えられています。兄である義顕は父に先立って戦死しており、次兄・義興の生母が身分の低い出自であったことから、義宗が家督を継ぐこととなりました。この状況が、後の義宗の行動に少なからず影響を与えたことは想像に難くありません。

正平6年/観応2年（1351年）冬、由良信阿の挙兵の誘いを受けた際、義興や従弟の脇屋義治は賛成したものの、義宗は兵力の差や足利尊氏による義貞弔いの事実を理由に、一度はこれを拒否しました。しかし、周囲の説得を受け、最終的には挙兵を決意することになります。この決断には、義宗の慎重さと、周囲の状況判断能力の両面が見て取れます。

正平7年/観応3年（1352年）閏2月、正平一統が崩壊。義宗は宮方・観応の擾乱において足利直義方に加勢し、足利尊氏と対立する立場をとりました。閏2月15日、上野で挙兵。武蔵国金井原（現在の東京都小金井市付近）など各地で尊氏と激戦を繰り広げます。三浦氏の支援を受け、義興は鎌倉に突入、尊氏の子・基氏を敗走させました。しかし、義宗自身は石浜（現在の東京都台東区付近）で尊氏と対決、敗北を喫します。笛吹峠（現在の埼玉県嵐山町付近）に陣を敷き、上杉憲顕の参陣を得て足利軍を迎え撃ちましたが、再び敗北し、越後へ退却しました。この一連の戦いは「武蔵野合戦」として後世に伝えられています。

正平13年/延文3年（1358年）、尊氏の死を機に、関東で再び決起を試みます。東国の南党に働きかけましたが、義興が武蔵国矢口渡で基氏に暗殺されたため、計画は頓挫。その後も義治と共に越後を中心に抵抗を続けましたが、南朝方の勢力は衰え続け、大規模な蜂起には至りませんでした。

正平23年/応安元年（1368年）、足利義詮と基氏の死を機に、武蔵の河越直重らの武蔵平一揆に呼応し、越後で義治と共に挙兵しました。しかし、上野沼田荘で敗北を喫し、義宗は戦死、義治は出羽へ逃れました。これが、広く知られている新田義宗の最期です。

一方で、義宗は武蔵国所沢の薬王寺に逃れ、出家して一族郎党の菩提を弔い、応永16年7月14日（1409年8月24日）または応永20年（1413年）に死亡したという説や、義治と共に阿波に落ち延びたという説など、複数の異説も存在します。

明治42年（1909年）、従三位を追贈されています。群馬県沼田市の白佐波神社には義宗と伝えられる木像が、また、近くの雲谷寺には義宗の墓と伝えられるものがあります。これらの史跡は、義宗の生涯と、人々の記憶が現在まで繋がっている証でしょう。新田義宗の生涯は、激動の南北朝時代を象徴する、ドラマチックで謎多き物語として、今も人々の心を捉え続けています。

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