武蔵野合戦

武蔵野合戦：南北朝時代の関東を揺るがせた激闘

武蔵野合戦は、南北朝時代の観応の擾乱後の正平7年/文和元年（1352年）閏2月から3月にかけて、武蔵国と相模国（現在の東京都、埼玉県、神奈川県）を舞台に繰り広げられた合戦です。北朝方の足利尊氏率いる軍勢と、南朝方の新田義興・義宗、そして宗良親王らを中心とした軍勢が激突しました。この合戦は、関東における南北朝の勢力争いの激しさを象徴する出来事であり、その後の関東情勢に大きな影響を与えました。

合戦の背景

観応の擾乱（1350年～1352年）によって北朝は足利尊氏派と足利直義派に分裂、激しい内紛を繰り返していました。尊氏は南朝と和睦し、直義を攻撃。薩埵峠の戦いで勝利した後、直義を降伏させ鎌倉に入城させます。直義はその後急死しますが、毒殺説も囁かれ、北朝内部の不穏な状況は継続していました。

こうした情勢の中、南朝方の北畠親房は北朝の不和を利用し、京都と鎌倉の同時奪還を企てます。正平7年閏2月15日、新田義貞の遺児である新田義興・義宗と、脇屋義治らが上野国で挙兵。同日には信濃国でも宗良親王を奉じた諏訪氏らが挙兵し、北朝方への攻撃が始まりました。

合戦の経過

金井原・人見ヶ原の合戦

新田軍は鎌倉を目指して南下。尊氏は鎌倉を放棄して神奈川に逃れ、新田義興・義治軍は閏2月18日に鎌倉を占領しました。その後、金井原（東京都小金井市）と人見ヶ原（東京都府中市）で足利勢と最初の戦闘が発生。尊氏は苦戦を強いられましたが、最終的には足利勢が勝利を収めました。

鎌倉合戦

尊氏は石浜（東京都台東区付近）に退却し、関東の旧族大名らに協力を要請。軍勢を再編した尊氏は、鎌倉を奪還しようと再攻撃を開始しました。新田軍は一時、鎌倉を掌握しましたが、閏2月28日、尊氏軍と激しい戦闘が繰り広げられ、再び足利勢が優勢に立ちました。この戦闘は、鶴岡八幡宮社頭周辺で行われ、激しい攻防が続きました。

小手指原合戦・笛吹峠の戦い

足利勢は、次に北武蔵に陣を敷いていた新田義宗を攻撃目標と決定。閏2月28日、小手指原（埼玉県所沢市）で小手指原合戦が勃発。新田軍は敗走し、入間河原、高麗原でも戦闘が続きました。その後、義宗らは笛吹峠（埼玉県鳩山町嵐山町境）に退き、ここで最後の戦闘が行われ、足利勢が勝利しました。義宗は越後方面へ、宗良親王は信濃方面へ逃れました。

鎌倉にいた新田義興は、足利軍の鎌倉進軍を知り、3月2日に鎌倉を脱出し、相模国河村城（神奈川県足柄上郡山北町）に立て籠もりました。その後、義興は越後に落ち延びました。北条時行は同年5月に処刑されました。

合戦の影響

武蔵野合戦の結果、南朝方の関東における勢力は大きく衰え、鎌倉を奪還することはできませんでした。しかし、南朝方の抵抗は各地で続き、尊氏は関東の情勢安定に1年以上を費やしました。この合戦の後、鎌倉府の運営体制も変化し、足利基氏と畠山国清を中心とした新たな体制が構築されました。武蔵野合戦は、南北朝時代の関東における勢力図を決定づける重要な合戦だったと言えるでしょう。

主要人物

北朝方（足利方）： 足利尊氏、足利基氏、畠山国清、他関東各地の有力武士

南朝方（新田方）： 新田義興、新田義宗、脇屋義治、宗良親王、上杉憲顕、三浦高通、北条時行、他

参考文献

上記の記述は、複数の歴史書や研究論文を参考に作成されています。詳細な参考文献は、必要に応じて別途提供いたします。

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