新疆天文台

中国科学院新疆天文台は、中華人民共和国の国立天文台であり、中国科学院国家天文台の傘下に属しています。新疆ウイグル自治区ウルムチ市に本部を構え、同自治区内にある複数の観測施設を統括しています。

1957年に中国科学院人工衛星観測所として設立され、1987年に中国科学院ウルムチ天文台に改称されました。2001年4月には国家天文台の発足に伴い、中国科学院国家天文台ウルムチ天文台となり、2011年1月に現在の名称である中国科学院新疆天文台へと改名されました。

新疆天文台では、電波天文学、光学天文学、パルサー、恒星形成と進化、銀河天文学、高エネルギー天体物理学、マイクロ波観測、デジタル技術応用、デブリ観測、衛星測位、GPSなど、多岐にわたる分野で観測と研究が行われています。

主要な観測施設

南山観測所

南山観測所は、ウルムチ市街から南西75kmに位置する海抜2,080メートルの山上に1991年に建設されました。この観測所には、25メートル電波望遠鏡システム、GPSデータ受信設備、太陽彩層望遠鏡などが設置されています。

特に重要なのは25メートル電波望遠鏡で、パルサー観測、センチ波分子スペクトル線観測、活動銀河核の研究に利用されています。また、国際VLBI（超長基線電波干渉法）ネットワークの重要な拠点としても機能しており、中国の月探査計画におけるVLBI軌道観測の四拠点の一つでもあります。

南山25メートル電波望遠鏡の観測波長は1.3cm、3.6cm、6cm、13cm、18cmで、アンテナの指向精度は18秒に達します。年間を通して観測が実施されており、2010年には累計観測日数が349日、アンテナ稼働時間は6,998時間に達しました。

パルサー観測

1996年2月、南山25メートル電波望遠鏡は中国で初めてパルサー観測に成功しました。2002年には受信機の冷却系がアップグレードされ、約270個のパルサーが観測されました。2008年には、先進的なデジタルフィルタバンク（DFB）を導入し、300個以上のパルサー（うち10個以上はミリ秒パルサー）の観測に成功しました。これにより、回転電波トランジェント、マグネター、パルサーの研究が進められています。

分子スペクトル線観測

2010年には、南山25メートル電波望遠鏡のセンチメートル波分子スペクトル観測システムが1GHzの帯域幅に更新され、8192分光点を持つDFB分光解析システムが導入されました。2011年からは、波長1.3cmを観測する高感度二重偏波冷媒受信機が導入され、18cm、6cm、1.3cmの主要な観測波長帯域で、ヒドロキシル基メーザー、ホルムアルデヒド吸収線、水素再結合線、水メーザー、メタノールメーザーなどの分子スペクトルが観測されています。

活動銀河核観測

南山25メートル電波望遠鏡は、ギガヘルツ帯にピークを持つ銀河外電波源（GPS電波源）や、日内変動電波源（IDV電波源）など、活動銀河核（AGN）の観測・研究にも利用されています。

カシュガル衛星地上局

カシュガル衛星地上局は、カシュガル市に位置し、中国の測位衛星を追跡する新疆ウイグル自治区内唯一の地上局です。「中国地域位置測定システム(CAPS)」と「北斗衛星測位システム」の運用を支援するほか、電離層や気象の観測、基準座標、精密時間信号伝達、地球自転速度の変化の測定、地殻変動データの収集など、多岐にわたる任務を担っています。

奇台110メートル電波望遠鏡（計画中）

新疆奇台110メートル電波望遠鏡（QTT）は、奇台県に建設が計画されている口径110メートルの全方位可動型電波望遠鏡です。完成すれば、アメリカのグリーンバンク望遠鏡やドイツのエフェルスベルク[[電波望遠鏡]]と並ぶ、世界最大級の可動型電波望遠鏡となり、深宇宙探査の分野で中国のニーズを満たすことが期待されています。

新疆天文台は、これらの観測施設と研究を通じて、天文学の発展に貢献しています。

出典

中国科学院新疆天文台ホームページ

関連項目

中国科学院
中国科学院国家天文台
電波望遠鏡
天文学
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