新納中三

新納中三（にいろ ちゅうぞう / なかぞう）

新納中三は、江戸時代末期の薩摩藩士であり、家老として活躍しました。通称は刑部（ぎょうぶ）、字は久脩（きゅうしゅう）、諱は中三（ちゅうぞう/なかぞう）です。幕末という激動の時代に、薩摩藩の要職を歴任し、西洋式軍制の導入や、海外との交流に尽力しました。維新後は新政府に出仕し、奄美大島島司としても手腕を発揮しました。

生い立ちと藩での活躍

天保3年（1832年）、薩摩藩家老の新納久仰（ひさたか）の三男として鹿児島に生まれました。新納氏は、島津氏の庶流であり、薩摩藩内でも重臣の家柄でした。中三は、島津斉彬（なりあきら）、茂久（もちひさ）の二代に仕え、軍役方総頭取として兵制改革に取り組み、西洋式の軍制を導入しました。文久2年（1862年）には軍役奉行に昇進し、翌年の薩英戦争では、その改革の成果が認められ賞賛されました。

慶応元年（1865年）には藩大目付に昇進し、薩摩藩遣英使節団の団長として、五代友厚（ごだい ともあつ）や松木弘安（まつき こうあん、後の寺島宗則）らと共にイギリスへ渡航しました。この時、変名として石垣鋭之助（いしがき えいのすけ）を名乗りました。イギリスでは、最新の軍艦購入交渉に当たり、ヨーロッパ各地も歴訪し、フランス、プロイセン、オランダ、ベルギーなどを視察しました。その際、紡績機械などの買い付けも行いました。また、ベルギーのモンブラン伯爵との間で、薩摩藩と商社設立契約を結び、パリ万国博覧会への参加準備にも携わりました。

帰国後の慶応2年（1866年）には、勝手方家老に昇進し、藩の財政を司りました。また、子息をフランスへ留学させるなど、国際的な視野を養うことにも力を注ぎました。戊辰戦争時には京都に滞在し、明治維新後も大目付として藩政改革に尽力しました。

明治維新後の活動

明治4年（1871年）の廃藩置県で薩摩藩が消滅すると、一旦は退職しましたが、明治9年（1876年）に七等判事として新政府に出仕しました。その後、一時退職しますが、明治18年（1885年）には奄美大島島司に任命されました。島司として、黒糖の流通改革に取り組み、負債に苦しむ島民のために尽力しましたが、翌年には突如免官され、位記返上を命じられました。これは、黒糖流通を独占していた鹿児島県商人の策謀によるものと言われています。しかし、その後も中三は島民から敬愛され、救世の恩人として慕われました。

明治22年（1889年）12月10日、58歳でこの世を去りました。

銅像

昭和57年（1982年）、鹿児島中央駅前東口広場に建てられた「若き薩摩の群像」の一人として、新納中三の銅像が建立されました。この像は、彫刻家の中村晋也によって制作されました。

新納中三は、激動の時代を生き抜き、薩摩藩の近代化と発展に貢献した人物です。その功績は、後世にも語り継がれています。

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