新納実久

新納実久（にいろ さねひさ）は、南北朝時代に活躍した武将で、島津氏に仕えた家臣であり、新納氏の二代目当主です。初代当主・新納時久の次男として生まれました。

実久が歴史に名を刻むのは、正平12年/延文2年（1357年）のことです。当時、日向国志布志松尾城で南朝方の武将・楡井頼仲が挙兵していましたが、頼仲が自刃したため、実久がその後を継いで松尾城に入りました。しかし、その直後、北朝方で足利直義派の武将・畠山直顕が侵攻してきます。この危機に対し、実久は当時まだ若かった島津氏久と共に、果敢に畠山軍を撃退しました。この戦いを経て、氏久が志布志城に入ると、実久は大隅国の経営に携わることになります。実久は、この地域での行政手腕を発揮し、島津氏の勢力拡大に大きく貢献しました。

天授5年/永和5年（1379年）、島津氏久と九州探題として派遣された今川了俊との間で戦が勃発します。この戦いで、実久は氏久の指揮下で左翼を任され、独自の陣形「月一揆」を展開しました。この陣形は、本陣の「小一揆」、右翼の「杉一揆」と連携し、少数精鋭で今川軍に対抗するものでした。蓑原の合戦において、実久は優れた戦術眼と武勇を発揮し、今川軍を打ち破ることに成功しました。この勝利は、島津氏の勢力を大いに高めることとなり、「月一揆」の陣形は、その後の島津家の基本戦術として受け継がれていくことになります。実久の戦術的な才能は、後の島津氏の戦いを支える重要な要素となりました。

実久の功績は、単に武将としての活躍に留まりません。彼は、地域経営にも手腕を発揮し、領内の安定と発展に尽力しました。また、その優れた戦術は、島津氏の歴史において重要な転換点となり、後の戦国時代における島津氏の隆盛の礎を築いたと言えるでしょう。新納実久の生涯は、まさに武勇と戦略に彩られたものであり、後世に語り継がれるべき人物です。なお、家督は彼の息子である忠臣が継ぎました。

実久の戦いぶりは、その後の島津氏の戦い方に大きな影響を与え、戦国時代の島津氏の強さの一因になったと言っても過言ではありません。彼の功績は、武将としての卓越した能力だけでなく、地域経営者としての能力も併せ持っていたことを示しており、彼の生涯は、武士のあるべき姿を体現していると言えるでしょう。

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