蓑原の合戦

蓑原の合戦（みのはるのかっせん）とは

蓑原の合戦は、南北朝時代の天授5年/永和5年（1379年）に、現在の宮崎県都城市で繰り広げられた合戦です。この戦いは、室町幕府の九州探題である今川了俊と、南朝に寝返った島津氏久との間で起こりました。今川氏の勢力拡大と、それに反発する南九州の国人たちの思惑が複雑に絡み合った戦いでした。

合戦の背景

当時、九州では南朝の征西大将軍懐良親王が勢力を伸ばしており、北朝の室町幕府は苦戦を強いられていました。そこで幕府は、今川了俊を九州探題に任命し、九州の安定化を図ろうとしました。了俊は、筑前の少弐氏、豊後の大友氏、大隅の島津氏久らの協力を得て、一時的に勢力を拡大しましたが、その過程で少弐氏を暗殺したことがきっかけで、島津氏久と大友氏が離反し、南朝側につくことになります。これにより、九州の情勢は再び混迷を深めることになります。

合戦の経過

島津氏久を討伐するため、今川了俊は息子の今川満範を南九州に派遣し、島津氏の所領を奪い、自身の支配下に置こうとしました。満範は各地の国人衆を集結させ、島津氏の本拠地である都之城を包囲します。都之城を守備していたのは、島津氏一族の北郷義久・樺山音久兄弟です。彼らは寡兵ながらも奮戦し、今川軍の侵攻を食い止めようとします。一方、島津氏久は、志布志城から出陣し、都之城の後詰に向かいます。両軍は都之城の西方の地で激突し、激しい戦闘を繰り広げました。

1度目の合戦（本の原の戦い）

天授5年/永和5年（1379年）3月1日、両軍は都之城の西にある本の原で激突しました。北郷義久も城から打って出て奮戦しましたが、島津軍は義久の弟や本田重親といった有力武将を失います。一方で、今川軍も相良頼氏、伊東祐基、渋谷久清などの有力武将を失い、戦況は今川軍の敗北に終わりました。

2度目の合戦（蓑原の戦い）

一度退却した今川軍は、3月3日に蓑原で再度合戦を行います。この戦いの詳細は不明な点が多いですが、今川軍が勝利したとも、敗北したとも言われています。いずれにせよ、今川満範は都之城から下財部方面へ退却しました。

戦後の影響

蓑原の合戦によって都之城の包囲は一時的に解かれましたが、今川軍は周辺に留まり、依然として緊張状態が続きました。その後、本田氏親が姫木城と清水城を攻略し、今川軍は敗走を余儀なくされます。今川氏は戦線を後退させ、真幸院に兵を集結させました。

その後、島津氏の家臣や南九州の国人たちが幕府に降伏したことで、今川軍の勢力は一時的に拡大します。しかし、島津氏久が再び今川了俊に帰順し、国人一揆の調略を続ける中で、今川氏の支配は次第に不安定になっていきます。最終的に、今川方の武将が離反したことで国人一揆は崩壊し、今川氏は南九州での支配権を確立することができませんでした。

島津氏久の子である元久は、後に幕府から薩摩・大隅・日向の守護職に任命され、南九州における支配権を確立しました。

合戦の意義

蓑原の合戦は、南北朝時代の九州における勢力争いを象徴する戦いの一つです。この合戦は、島津氏の勢力を一時的に弱めることには成功しましたが、最終的には島津氏が南九州での支配権を確立する結果となり、室町幕府の九州支配は困難を極めました。また、この合戦は、南九州の国人たちの動向が、戦局に大きな影響を与えることを示す事例でもあります。

参考文献

高城町史編集委員会『高城町史』高城町、1989年。
都城市史編さん委員会編『都城市史 通史編 中世・近世』都城市、2005年。
熊本県教育会球磨郡教育支会 編『国立国会図書館デジタルコレクション 球磨郡誌』熊本県教育会球磨郡教育支会、1941年。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1042262/666

関連項目

九州平定

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