旅滬型駆逐艦

旅滬型駆逐艦は、中国人民解放軍海軍が新しい海洋戦略に基づき、西側諸国の先進技術を大規模に導入して開発した、初の外洋作戦対応型大型水上戦闘艦です。中国海軍での呼称は052A型駆逐艦とされます。

概要

1990年代初頭に2隻が就役した本級は、竣工当時は中国が建造した最大の駆逐艦でした。しかし、ほぼ同等の任務をより低コストで担える江衛型フリゲートが実用化されたため、追加建造は行われませんでした。本級の開発と運用経験は、その後の中国海軍艦艇の近代化に重要な足がかりとなりました。

設計と主機関

船体は、乾舷の高い遮浪甲板型で、大型の艦橋や太い煙突、後部のヘリコプター運用設備といった特徴的な配置を持ちます。全体的なシルエットには、フランス海軍のジョルジュ・レイグ級駆逐艦との類似性が指摘されています。

主機関には、中国人民解放軍海軍の水上戦闘艦として初めてガスタービンエンジンを採用。ディーゼルエンジンとの組み合わせによるCODOG方式です。1番艦にはアメリカ製LM2500ガスタービンが搭載されましたが、天安門事件後の技術輸出規制により、2番艦ではウクライナ製UGT-25000が搭載されるなど、国際情勢の影響を受けました。

搭載装備

本級の装備は、既存艦艇を用いたテストベッド研究の成果を統合したものです。防空システムは、フランス技術を基にした中国製システムを採用。対空・対水上捜索レーダー、戦術情報処理装置、そして個艦防空ミサイルHHQ-7システムで構成されます。HHQ-7は8連装発射機を備え、専用の火器管制レーダーと連動します。

航空機運用能力も重視され、後部にはヘリコプター2機分のハンガーと、着艦拘束装置などを備えたヘリコプター甲板が設けられています。主砲には、改良型の56口径100mm連装砲が搭載されました。また、ソナーシステムは、フランス製システムを参考にした艦首装備型と可変深度型が搭載されています。

近代化改修

就役後、2隻は大規模な近代化改修を受け、戦闘能力が強化されました。改修時期は2010年代初頭です。主な変更点として、対艦ミサイルがYJ-8A連装発射筒から新型のYJ-83四連装発射筒へ換装されました。また、旧式の対潜ロケット砲は更新され、CIWS（近接防御火器システム）も強化型の30mmガトリング砲システムに変更されています。レーダーシステムも一部が新しいタイプへ更新されています。

活動状況

旅滬型駆逐艦は、中国海軍の主力艦として様々な任務に就いています。艦隊の指揮艦を務めることもあり、2012年には「哈爾浜」が大規模艦隊を率いて太平洋を航行し、海上自衛隊によって確認されました。この航海では、初めて女性軍人が多数搭乗したことも注目を集めました。また、「青島」も西太平洋での演習に参加するなど、積極的に外洋でのプレゼンスを示しています。

登場作品

本級は、フィクション作品にも登場しており、漫画『空母いぶき』や小説『天空の富嶽』では、架空の戦闘シーンなどにその姿が描かれています。

まとめ

旅滬型駆逐艦（052A型）は、中国海軍にとって外洋能力獲得と近代化の起点となった重要な艦級です。建造数は少数に留まりましたが、導入された先進技術とその運用経験は、その後の中国海軍艦艇の発展に不可欠な要素となりました。現在も近代化改修を受けつつ運用されており、中国海軍の歴史において特筆すべき存在と言えます。

もう一度検索