ジョルジュ・レイグ級駆逐艦

ジョルジュ・レイグ級駆逐艦：フランス海軍の対潜戦の要

ジョルジュ・レイグ級駆逐艦は、フランス海軍が運用するフリゲート艦級です。対潜戦能力を重視した設計が特徴で、艦級名はフランス海軍の軍人ジョルジュ・レイグに由来します。当初はコルベットとして計画されていましたが、1988年にフリゲートに分類変更されました。しかし、NATOでは駆逐艦として分類されており、多くの海軍専門書でも駆逐艦として扱われています。

誕生の背景：冷戦下の潜水艦脅威

1940年代後半から1950年代にかけて建造されたフランス海軍の駆逐艦は、対空・対水上戦闘能力を重視した設計でした。しかし、冷戦下の進展に伴い、潜水艦による脅威が深刻化します。この状況を受け、フランス海軍は対潜戦能力強化を必要とし、1956年には対潜能力を強化した「ラ・ガリソニエール」が建造されました。この経験を元に、本格的な対潜戦を重視した大型護衛艦（コルベット）の建造計画が立ち上がり、1965年には「アコニト」、1967年にはトゥールヴィル級が建造されました。

ジョルジュ・レイグ級は、1972年のフランス海軍の15ヶ年計画「ブルー計画」の一環として建造されました。当初は、共通船体設計に基づく対潜型コルベット18隻と対空型コルベット6隻の建造が計画されていましたが、財政事情により、対潜型7隻、対空型2隻の建造にとどまりました。ジョルジュ・レイグ級は、この対潜型コルベットとして建造された艦級です。対空型として建造されたのがカサール級です。

設計：居住性と堅牢性を両立

ジョルジュ・レイグ級は、大量建造を想定して、先行するC-67型よりも小型化されました。しかし、居住性向上のため、初期設計と比較して艦全長を5メートル、排水量を150トン増加させています。女性乗員の乗艦にも配慮した設計となっており、艦内居住空間の快適性に重点が置かれています。また、船体構造は抗堪性を高めるため、NBC防護にも配慮したシタデル構造を採用しています。後期建造艦（5～7番艦）では航海艦橋の高さが1甲板分高くなっており、外見上の識別点となっています。

堪航性向上のため、デニー・ブラウン社製のフィンスタビライザーを装備。艦齢半ばに船体に亀裂が見つかったことから、2002年から2003年にかけて船体強化工事が行われ、120トンの鋼板と210トンの固定バラストが追加されました。推進機関は、イギリスやオランダ海軍の影響を受け、ガスタービンエンジンを採用したCODOG方式です。停止状態から3分以内に最大速度に達することが可能です。

装備：多様なセンサーと兵器システム

ジョルジュ・レイグ級は、C4ISRシステムとしてSENIT-4を搭載し、衛星通信装置としてシラキューズIIやインマルサットを採用しています。センサー類は、後期建造艦では更新されています。デコイ発射機は、当初はサイレクスでしたが、4番艦以降はDAGAIEに変更され、後に1～3番艦にも搭載されました。また、1990年代後半には対艦ミサイル防御能力向上のための改修が行われ、SENIT-8.01情報処理装置やDIBC-2A光学方位盤などが追加されました。

主砲は55口径100mm単装速射砲を艦首に、個艦防空ミサイル・システムとしてクロタル（後期建造艦ではクロタルEDIR）を搭載しています。対艦ミサイルは、1・2番艦ではエグゾセMM38、3番艦以降はエグゾセMM40を搭載しています。対潜兵器として魚雷発射管を備えており、5～7番艦ではMU90用の発射管に更新されています。

艦載機と艦載艇

後部には、リンクス哨戒ヘリコプター2機を搭載できるハンガーとヘリコプター甲板を備えています。艦載艇として、内火艇やゾディアック社製の複合艇も搭載し、多様な任務に対応できる能力を有しています。

まとめ：フランス海軍対潜戦の中核

ジョルジュ・レイグ級駆逐艦は、フランス海軍の対潜戦能力の向上に大きく貢献した艦級です。その設計、装備、運用は、冷戦下の技術革新とフランス海軍の戦略を反映しており、海軍史における重要な位置を占めています。本級の運用経験は、後のフランス海軍艦艇の設計に大きな影響を与えたことは間違いありません。

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