日光皇太子夫妻襲撃事件

日光皇太子夫妻襲撃事件

1972年1月6日、栃木県日光市で発生した、当時の皇太子明仁親王と美智子妃に対する襲撃事件について解説します。

事件の概要

1972年1月5日、皇太子夫妻は第27回国民体育大会冬季大会に出席するため日光市を訪問されました。翌6日、東武鉄道の特急「けごん」で東京へ帰還される予定でした。

1月6日午後4時34分、皇太子夫妻は東武日光駅に到着し、特急「けごん」に乗車するために御料車から降りられました。その際、奉迎の群衆の中から、一人の少年が突進してきました。護衛にあたっていた皇宮護衛官は、咄嗟に少年を皇太子夫妻とは反対方向に払い除け、少年は栃木県警察に逮捕されました。皇太子夫妻は一旦御料車に戻られましたが、その後再度降車し、予定通り東京へ帰還されました。

犯人

犯人の少年は、足利市在住の当時18歳の定時制高校生で、工場に勤務していました。また、社青同解放派の構成員でもありました。

少年は、日頃から「共産党宣言」や「毛沢東語録」を読み、天皇制を打倒し、暴力革命の先駆けになりたいという思想を持つようになりました。皇太子夫妻が日光に滞在されることを知ると、爆弾を投げつける計画を立てました。化学に興味があった少年は、高校でも化学科に在籍しており、書店で売られていた「都市ゲリラ」に関する本を参考に爆弾を製造しようとしました。しかし、爆破実験では白煙しか出なかったため、爆竹を投げつけることに計画を変更しました。

事件当日、少年は爆竹3本とマッチを持って東武日光駅で待ち構えていました。しかし、マッチ棒を折ってしまい着火できなくなったため、手袋を投げつけることにしました。皇太子夫妻が御料車から降りた瞬間、少年は「天皇制反対」と叫びながら手袋を投げつけ、突進しましたが、皇宮護衛官によって阻止されました。

事件後、少年は宇都宮少年鑑別所に送られました。取り調べに対し、今回の行動は自身の判断によるもので、所属する社青同解放派の指令によるものではないと供述しました。また、自身の行動によって周囲に多大な迷惑をかけたことを反省する意思を示しました。

2月10日、宇都宮少年鑑別所は少年を保護観察処分としました。

事件の影響

この事件は、戦後の新左翼運動が過激化する中で発生した、皇室に対する直接的な攻撃事件として注目されました。事件後、皇室の警備体制が見直されるきっかけにもなりました。

参考文献

皇宮警察史編さん委員会編『皇宮警察史』皇宮警察本部、1976年

関連項目

新左翼
反皇室闘争
皇宮警察本部

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