反皇室闘争

反皇室闘争とは

反皇室闘争は、日本の新左翼が展開した政治闘争の一つです。これは、皇室の存在そのものを否定し、暴力的な手段を用いてその廃絶を目指す活動を指します。警察学論集では、「革命運動の一環として皇室の存在を否定し、暴力的な手段でその廃絶を企図する各種の活動」と定義されています。本稿では、この皇室を標的とした非合法活動について詳しく解説します。

沿革

1970年代

新左翼勢力が台頭してきたのは1957年以降ですが、彼らが公然と反皇室闘争を掲げるようになったのは1960年代後半のことです。例えば、中核派は機関紙「前進」で、自らを「天皇制と闘ってきた革命党」と位置づけ、その起源を1967年開始の建国記念の日反対闘争に求めています。

1970年代に入ると、反皇室闘争はさらに過激化しました。皇室関連施設を狙ったテロ事件が頻発し、第1次、第2次坂下門乱入事件などが起こりました。さらには、皇太子夫妻に危害を加えようとしたひめゆりの塔事件や、昭和天皇暗殺を企図した東アジア反日武装戦線の虹作戦にまで発展しました。

この時期の反皇室闘争は、「君主制の是非」を問うというよりは、「昭和天皇の戦争責任追及」という側面が強く、「昭和天皇糾弾闘争」の様相を呈していました。昭和末期になってようやく、「天皇という制度に反対する闘争」という側面が前面に出されるようになり、皇位継承後も闘争を継続するための理論構築が迫られました。

昭和末期と平成初期

1988年9月、昭和天皇が重病になったことで、反皇室闘争は転換期を迎えます。当時の新左翼の間では、「天皇が死んだら白色テロが吹き荒れ、左翼は皆殺しにされる」といった終末論的なデマが広まり、カルト的な悲壮感が蔓延していました。当時闘争の渦中にいた外山恒一氏は、「今思えば、天皇が死んでなぜ右翼が暴れなければならないのか理解できない」と当時を振り返っています。

新左翼各派は、彼らの主要闘争である三里塚闘争と結び付け、「天皇制打倒」を叫び、この時期に数々のテロ事件を起こしました。また、特定の党派に属さないノンセクト・ラジカルの間でも、反天皇制運動連絡会や反天皇制全国個人共闘・秋の嵐など、反皇室闘争を主要なテーマとする組織が登場しました。

平成以降

平成に入ると、反皇室闘争は縮小の一途を辿ります。その主な理由は、象徴天皇制が国民の間に定着したこと、そして新左翼運動全体の衰退です。活動家の高齢化も進み、過激な闘争を展開できる人物が激減しました。現在では、新左翼諸党派が街頭で小規模なデモを行う程度に留まっています。例えば、2008年1月、長野県で開催された冬季国体開会式に皇太子夫妻が出席することに反対する地元団体が、マスコミやタウン情報誌で集会を呼びかけましたが、集まったのは10人にも満たなかったとされています。

脚注

警察学論集（警察大学校編　1989年5月号）

関連項目

新左翼
テロリズム
天皇制廃止論（君主制廃止）

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