日本とリビアの関係

日本とリビアの関係は、1957年に外交関係が樹立されたことに始まります。1969年にムアンマル・アル＝カッザーフィー（カダフィ大佐）によるクーデターが発生し、リビアは社会主義国家へと転換しましたが、日本との外交関係は維持されました。1973年にはトリポリに在リビア日本国大使館が開設されました。

歴史

外交史

1957年、日本はリビア王国と外交関係を樹立しました。1969年のクーデターでカダフィ大佐が独裁政権を樹立し、「大リビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ国」として社会主義へと転換しましたが、両国間の外交関係は維持されました。

1973年には、トリポリに在リビア日本国大使館が開設されました。2011年のリビア内戦の影響で、大使館は一時閉鎖されましたが、リビア国民評議会の政権掌握後に業務を再開しました。しかし、2014年に再び内戦が勃発し、同年7月には大使館はカイロへ退避しました。2018年3月には、カイロからチュニスへと移転し、大使館業務を継続しました。2024年1月15日には、トリポリの在リビア日本国大使館が再開されました。

一方、リビア側は1971年8月に駐日リビア大使館を開設しました。1980年1月にはジャマーヒリーヤ体制（社会主義的な要素を含む直接民主制）へと転換したため、人民事務所へと改称されましたが、カダフィ政権終焉後の2011年9月にはリビア大使館へと名称が戻っています。

リビア内戦

2011年、アラブの春の影響を受けて、反カダフィ勢力によってリビア国民評議会が結成され、リビア内戦が勃発しました。民主化運動を弾圧しようとしたカダフィ大佐は国際的な批判にさらされ、日本は国連安保理決議1970に基づき、カダフィとその関係者に対し資産凍結や武器禁輸といった経済制裁を実施しました。また、日本政府は即時停戦を幾度も訴えました。

駐日リビア大使館周辺では、カダフィ体制に反対する在日リビア人によるデモも行われました。その後、日本政府はリビア国民評議会を支持する立場を明確にし、リビア国民評議会がトリポリを掌握してカダフィ政権が事実上崩壊した後、リビアの再出発を歓迎しました。日本政府はリビア・フレンズ会合に出席し、リビア国民評議会のリビア代表権承認を後押しし、経済制裁を段階的に解除、人道支援を実施しました。

しかし、2014年にはリビア国民評議会から権限を委譲された世俗的なリビア国民代議院に対抗して、イスラム過激派が勢力を増し、内戦が勃発しました。首都トリポリでも戦闘が行われ、イスラム系勢力によって結成された新国民議会が首都を制圧。リビア国民代議院は東部の港湾都市トブルクに退去し、二つの政府が並立する状態となりました。さらに、ISILもリビアに進出し、限定的な支配を固めました。日本はこれを強く非難し、領土が解放された際には祝意を表明しました。

2015年、リビア国民代議院と新国民議会の協議により、ファイズ・サラージを新首相とする統一政権を樹立することで合意しましたが、それに反対してエジプトが支援するリビア国民軍やトルコが支援する国民救済政府が独立した勢力を築き、内戦が継続しました。日本政府はこれらの勢力の武力行使を非難し、約7年ぶりに資産凍結などの経済制裁の対象を追加しました。

このように、日本はリビア情勢を注視しており、民主的勢力（リビア国民評議会、リビア国民代議院、国民統一政府）を一貫して支持しています。

外交

リビアは紛争が継続しているため、政局は不安定で、要人往来も活発ではありません。日本からは、2012年に山根隆治外務副大臣がリビアを訪問したのが最後です。一方、リビア側の要人は、アフリカ開発会議出席などのために訪日しており、2019年8月にはリビア国民統一政府の外相であるモハンマド・アル＝ターヘル・シヤーラが訪日し、河野太郎外務大臣と会談しました。また、両者は以前にエジプトで外相会談を行い、日本側は中東の安定構築にはリビアが不可欠な存在であると述べています。

経済交流

リビアはアフリカ有数の豊かな国でしたが、2005年12月のDACリスト改訂に伴いODA対象国となり、2014年の内戦勃発まで技術協力が行われていました。内戦後は経済援助が停止されましたが、2018年度からはABEイニシアティブによる留学生受け入れが決定しました。2011年の内戦以降、国際機関を経由した支援は、2014～15年度を除いて継続的に実施されています。2018年度は、国連開発計画（241万米ドル）及び国連世界食糧計画（80万米ドル）を通じて、経済復興と食糧支援が実施されました。

2018年のリビアの対日貿易は、輸出15.09億円に対し輸入35.37億円で、日本の黒字となっています。内戦による経済制裁の影響もあり、両国の経済規模に比べて貿易規模は小さいです。

内戦前、石油天然ガス・金属鉱物資源機構（JOGMEC）とリビア国営石油会社NOCは、石油・天然ガス分野での技術協力を実施していましたが、現在は凍結されています。新日本石油、国際石油開発帝石ホールディングス、石油資源開発といった日本企業5社が、リビアでの製油所建設を交渉していましたが、これも内戦により中断されています。

文化交流

2011年の内戦以降、政府レベルでの文化交流や文化事業は行われていません。日本では「日本リビア友好協会」が設立され、国連制裁下でも両国の文化交流促進に向けて活動を続けています。会長は小池百合子氏が務めています。

2007年にはトリポリで第36回トリポリ国際見本市が開催され、日本館も開設されました。日本企業12社が参加し、来場者は28万人と盛況でした。

外交使節

駐リビア日本大使

（記載なし）

駐日リビア大使・書記

駐日リビア大使
ハサン・エルハーディー・ブクレス（ハサン・ブクレス、1972年～、信任状捧呈は2月18日）
（臨時代理大使）ベッテルマル某（1978～1980年）
駐日リビア人民事務所書記
（代理書記）ベッテルマル某（留任、1980年～）
（代理書記）ターヒル・アリー・マルワーン（マルワン）
（代理書記）アリー・アシュタウィー・ムフタール（アリ・アシュタウィ・ムフタール）
（代理書記）アリー・S・ハメルビタン（～2002年）
空席（2002～2004年）
ムフターフ・ムハンマド・H・フェトゥーリー（ムフター・M・H・フェトゥーリー、2004～2007年、信任状捧呈は4月9日）
（代理書記）アンナージャ・A・B・アンナージャ（2007～2010年）
（代理書記）ジュマア・S・G・オウン（2010～2011年）
駐日リビア大使
（臨時代理大使）ジュマア・S・G・オウン（留任、2011～2012年）
（臨時代理大使）アフマド・アブドルカリーム・サーレム・オウン（2012～2014年）
アフマド・アブドルカリーム・サーレム・オウン（臨時代理大使と同一人物、2014～2017年、信任状捧呈は3月12日）
（臨時代理大使）アメッド・ムフター・ルフマ・ナイリ（2017～2021年）
（臨時代理大使）セラージ・S・A・アルシュテウィ（2021～2022年）
（臨時代理大使）アハメッド・S・A・アルナァース（2022年～）

脚注

（省略）

参考文献

リビア（Libya）基礎データ　外務省
塩尻和子著『リビアを知るための60章エリア・スタディーズ』 2006/8/9

外部リンク

在リビア日本国大使館
* 駐日リビア大使館

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