日本と欧州連合の関係

日本と欧州連合（EU）の関係

日本と欧州連合（EU）の関係は、経済、政治、文化、安全保障など多岐にわたる協力関係で特徴づけられます。EUは国家連合ではなく、加盟国とは別に外交を展開する独自の国際機関としての側面を持ちます。日本との関係は友好的であり、両者は多くの共通の価値観を共有しています。

歴史

両者の関係は、EUの前身である欧州経済共同体（EEC）時代に遡ります。1959年、日本はEECに初の大使を派遣しましたが、代表部の設置は遅れました。1974年に駐日EC委員会代表部、翌年には欧州共同体日本政府代表部が設立され、通商問題解決の窓口としての役割を果たしました。1990年には、駐日EC委員会代表部の代表者が「大使」として遇されるようになり、組織の変化に伴い、それぞれの名称が現在の駐日欧州連合代表部、欧州連合日本政府代表部に変更されました。

近年では、文化や安全保障面での協力も進んでいますが、経済的な結びつきは1980年代の貿易摩擦解消以降、非常に緊密です。1987年には、日欧産業協力センターが設立され、産業・貿易・投資の促進に貢献しています。2018年には日EU経済連携協定が締結され、貿易・投資の障壁が取り除かれつつあります。また、政治面では、1991年の「日本・EC共同宣言」に基づき、多岐にわたる協力関係が構築されています。日EU定期首脳協議は原則年1回開催され、2018年には日EU戦略的パートナーシップ協定が締結され、政治・外交・社会・安全保障関係の緊密化が進んでいます。

外交

日EU関係

EUと日本は、民主主義、資本主義、自由主義、平和主義、法の支配、人権尊重といった多くの価値観を共有しています。また、EU加盟国の多くが先進国であり、高い生活水準を誇る点も日本と共通しています。そのため、両者は友好的な関係を築いており、加盟国との間に大きな政治的懸案はありません。政治・経済・文化・安全保障など、いずれの分野においても世界的な影響力を持ち、様々な国際機関や国際フォーラムで協力しています。

2018年には、日EU戦略的パートナーシップ協定が締結され、政治やグローバル課題、その他の分野における協力関係を強化しています。この協定は、EUだけでなく、加盟国も当事者となる「条約」であり、加盟国での手続きが順次進められています。宇宙、海洋、サイバー、環境、エネルギー、保健、テロ、国際犯罪など、あらゆる分野での協力が段階的に進められ、準同盟としての性質を強めています。日EU戦略的パートナーシップ協定合同委員会も定期的に開催されています。

日本要人のEU訪問

日EU定期首脳協議は、ヨーロッパと日本で交互に開催されています。また、首脳協議以外にも、日本要人のEU訪問は頻繁に行われています。

2014年3月、安倍晋三首相（当時）がハーグを訪問し、クリミア危機について議論しました。2015年1月には、岸田文雄外相（当時）がブリュッセルを訪問し、日EU経済連携協定やウクライナ情勢について協議しました。2016年5月と2017年3月には、安倍晋三首相とEU首脳との間で首脳会談が行われました。2018年には、河野太郎外相（当時）がEU外相と会談し、同年10月には、EU委員長との首脳会談が実施されました。2019年9月には、安倍晋三首相が欧州連結性フォーラムに出席し、インフラに関する協力文書に署名しました。2022年2月には、林芳正外相がEU外相と会談し、ウクライナ情勢などについて議論しました。

EU要人の訪日

日EU定期首脳協議の東京開催時やG7サミットなどの際には、EUの首脳や閣僚が日本を訪問します。2013年には、EU外務・安全保障政策上級代表が訪日し、日EU戦略的パートナーシップ協定や経済連携協定の締結に向けた方向性が示されました。2017年と2019年には、貿易担当委員が訪日し、経済連携協定に関する協議が進められました。2019年10月には、EU外務・安全保障政策上級代表が即位礼正殿の儀出席のために訪日し、外相と会談しました。

経済関係

2020年の日本の対EU輸出は6兆3148億円、対EU輸入は7兆7200億円であり、大規模な貿易が行われています。主要な輸出品目は自動車や自動車部品、輸入品目は医薬品や自動車です。EUにとって、日本はアジアで中国に次ぐ第二位の貿易相手国です。直接投資の額も大きく、日本からEUへの投資額はEUから日本への投資額を大きく上回っています。

日EU経済連携協定は、2019年に発効し、世界経済の約3割を占める巨大な自由経済圏が誕生しました。この協定は、両者のGDPを押し上げ、自由貿易の旗手としての役割を果たすことが期待されています。

加盟国との関係

日本とEU加盟国との間には、それぞれに特有の協力関係が存在します。以下に、いくつかの加盟国との関係を概説します。

アイルランド：経済、投資、技術における協力関係を深めています。
イタリア：有力な貿易相手国であり、国際政治でも協力関係にあります。
エストニア：サイバー分野での協力を進めています。
オランダ：歴史的に強い関係があり、日EU協力関係の基礎を築きました。
オーストリア：貿易、音楽、文学など、文化的な交流が活発です。
ギリシャ：伝統的な友好関係を継続しています。
キプロス：国際政治において協力することもあります。
クロアチア：経済成長がEU加盟に役立ちました。
スウェーデン：二国間関係に懸案はなく、友好的な関係です。
スペイン：経済関係が強く、多くの価値観を共有しています。
スロバキア：交流は多くないものの、友好関係が発展しています。
スロベニア：ビジネスや貿易における関係が成長しています。
ドイツ：長らく欧州最大の貿易相手国であり、安全保障関係も強化されています。
チェコ：友好国であり、経済支援が実施されていました。
デンマーク：医薬品分野での協力関係があります。
ハンガリー：「V4+日本」という枠組みで結びつきがあります。
ポルトガル：歴史的な交流から友好関係を築いています。
ポーランド：経済支援が実施されており、友好国です。
フィンランド：文化面での交流が多いです。
フランス：有力な貿易相手国であり、安全保障面でも協力関係を深めています。
ブルガリア：民主化や市場経済化を支援しています。
ベルギー：EUの本拠地があるため、要人訪問が多いです。
マルタ：交流が深化しつつあります。
ラトビア：価値観を共有する友好国です。
リトアニア：歴史的に親日感情が強く、安全保障上の交流も強化されています。
ルクセンブルク：経済的関係は希薄でしたが、協定締結により深化しています。
ルーマニア：民主化・市場経済化を支援しています。

外交使節

駐EU日本大使
* 駐日EU大使：過去にはハンスディートマール・シュヴァイスグート、ヴィオレル・イスティチョアイア＝ブドゥラ、パトリシア・フロアなどが務めました。パトリシア・フロアは、日本と欧州の関係深化を目指す知日派として知られています。

駐日EU大使館は東京都港区南麻布に所在し、EUを主導するフランスやドイツの大使館も徒歩圏内にあります。

まとめ

日本とEUの関係は、歴史、外交、経済、文化など、多岐にわたる分野で緊密な協力関係が築かれています。両者は共通の価値観を共有し、国際社会における重要なパートナーとして、今後もその関係が深化していくことが期待されます。

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