日本平デジタルタワー

日本平デジタルタワー：静岡のテレビ放送を支えるランドマーク

静岡市清水区の日本平山頂に位置する日本平デジタルタワーは、静岡県におけるテレビ放送の中枢を担う送信施設です。NHKと静岡県内の民放5局が共同で建設したこのタワーは、UHF放送波を用いて県中部・東部、伊豆西海岸をカバーしています。さらに、浜松や島田といった地域の中継局へのマイクロ波送信設備も備えているなど、広範囲にわたる放送網を支える重要な役割を担っています。

デジタル化と放送エリアの変遷

地上デジタル放送への移行に伴い、2004年に予備免許が交付され、2005年には試験放送を経て本格放送が開始されました。アナログ放送時代の日本平テレビ・FM放送所跡地に建設されたため、多くの世帯ではデジタル放送の受信に際し、アンテナの増設や方向調整といった作業が不要でした。静岡市内周辺の中継局を利用していた世帯も、このタワーの受信エリアに統合されたことで、より安定した受信環境が実現しました。

展望施設「日本平夢テラス」と景観との調和

2018年には、タワー周辺に展望施設「日本平夢テラス」が開業しました。タワー自体は、景観との調和を考慮した設計がなされており、従来の鉄塔に見られる赤白の縞塗装ではなく、銀灰色の構造体に中光度の白色航空障害灯を採用。その結果、2005年度グッドデザイン賞と静岡県建設業協会賞優秀賞を受賞しています。日本平の雄大な景観に溶け込む、美しいデザインが評価されたと言えるでしょう。

マルチメディア放送と歴史

日本平デジタルタワーでは、地上デジタルテレビ放送に加え、かつてマルチメディア放送も送信していました。2012年から2016年までサービスが提供されていましたが、その後終了しています。

タワーの建設には、最新の技術とノウハウが結集されました。例えば、主構造にCFT柱を採用することで、強風や地震にも耐えうる堅牢な構造を実現しています。これは、日本平の風土的条件を踏まえた上で、安全性を最優先に設計されたことを示しています。

技術的側面

日本平デジタルタワーは、単なる送信施設にとどまりません。UHF放送波による直接放送に加え、マイクロ波による中継局への送信設備も備えている点が特徴です。これは、複雑な地形を持つ静岡県全域への放送を安定的に実現するために不可欠な技術です。マイクロ波を用いることで、山間部や離島などへの放送を効率的に行うことが可能となります。

まとめ

日本平デジタルタワーは、静岡県民にとってなくてはならないインフラです。デジタル化への対応、景観との調和、そして先進的な技術の導入など、多角的な視点から設計・建設され、地域社会に貢献しています。展望施設「日本平夢テラス」と合わせて、日本平を訪れる観光客にとっても魅力的な存在となっています。今後も、安定した放送サービスを提供し続けることが期待されます。

参考文献

* 篠崎洋三,藤山淳司,柳井正,安井正憲,近藤浩史,伊藤嘉規「日本平デジタル放送所CFT柱を主体構造とした放送用タワーの設計・施工」『JSSC : 日本鋼構造協会機関誌』第56号、日本鋼構造協会、2005年4月30日、38-43頁、ISSN 03899020、NAID 10015533205。

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