日本民謡大賞

日本民謡大賞：民謡界を彩った祭典の軌跡

1978年から1992年まで、日本テレビ系列で毎年10月に放送された特別番組「輝け！第○○回日本民謡大賞」は、民謡界における一大イベントでした。本番組は、バブル経済崩壊によるスポンサー撤退を機に、15回をもって幕を閉じましたが、その15年間は民謡ファン、そして日本の音楽史に深く刻まれています。

大会概要と特徴

「日本民謡大賞」は、日本民謡協会や日本郷土民謡協会といった民謡愛好家の全国組織が主催する大規模な大会とは一線を画していました。レコード会社所属のプロ歌手からアマチュアまで、所属を問わず参加できる門戸の広さが大きな特徴でした。当時としては異例な規模で、土曜日のゴールデンタイムに日本武道館から2時間生放送される様子は、多くの視聴者を魅了しました。出場者と伴奏者の交通費や宿泊費は、すべて日本テレビが負担していたという点も特筆すべきでしょう。

年齢を問わず、この大会の上位入賞者はプロ歌手への道を切り開くことも多く、藤あや子や香西かおりといった著名な歌手も出場経験を持つなど、民謡界における登竜門としての役割も担っていました。番組は、オープニングに花笠音頭、エンディングによさこい鳴子踊りを用いるなど、日本の伝統芸能を華やかに演出。一貫してステレオ放送を採用していたことも、当時の放送番組としては画期的でした。また、大会の模様を収録した実況録音盤がキングレコードやバップから発売されていたこともありました。

大会開催までの道のり

まず、都道府県単位で予選が行われ、中には県内をさらに細かく分けた予選会を開催する地域もありました。関東地区では、独立UHF4局も予選に参加していました。その後、春から夏にかけて日本テレビ系列各局が主催するブロック別予選会が開催され、関東大会では関東地方に加え甲信越・静岡の各地域が参加していました。これらの予選を勝ち抜いた精鋭たちが、10月、日本武道館で行われる本大会へと駒を進めました。

白熱の本大会

本大会は、土曜日の夜7時から8時54分まで、2時間枠で生放送で行われました。前日金曜日の同会場では最終予選が行われ、各地の予選を勝ち抜いた出場者たちが東日本と西日本に分かれて競い合い、それぞれの上位5名が翌日の本大会へ進出しました。番組冒頭では、司会者によって東西各5名の決勝進出者が発表され、再び熱唱を披露。その後、東西各代表1名が最終決戦へと進みます。ゲストのプロ民謡歌手による華麗なアトラクションや、審査員特別賞、NNS特別賞の発表、さらに前年度大賞受賞者のゲスト出演といった様々な演出が織り込まれ、いよいよ最終決戦へ。

最終決戦では、東代表と西代表が順番に熱演を披露し、9名の審査員が東西どちらを支持するかを「東」「西」と口頭で発表し、同時に舞台上の電照板のスイッチを操作、紅白の電照ボックスを点灯させるという、非常に分かりやすい審査方法が用いられました。審査員が9名だったため、引き分けは起こりませんでした。2名による最終決戦という形式だったため、敗れた代表は自動的に準優勝となりました。

賞品と出場資格

優勝者には内閣総理大臣賞が贈呈され、最終決戦進出者には三菱自動車より車が贈呈されていました。出場資格は非常に広く、個人・団体、所属を問わず、プロ歌手や民謡教室の指導者も参加可能でした。番組は『土曜スペシャル』、『土曜トップスペシャル』、『土曜スーパースペシャル』枠で放送され、通常よりも拡大された放送時間（19時～20時54分）が設けられていました。

主要スタッフ

司会は、徳光和夫、石川牧子、小倉淳、菅家ゆかり、福留功男といった日本テレビのアナウンサー陣に加え、沢田亜矢子、水前寺清子、愛川欽也、榊原郁恵、高島忠夫といった豪華な顔ぶれが務めました。審査員は、斉藤京子、三橋美智也、藤本琇丈、三隅治雄、柴田耕頴、佐藤松子、仲井幸二郎、小島美子、町田嘉章といった民謡界の重鎮が名を連ね、演奏は高橋達也と東京ユニオン、ガッシュアウトが担当しました。

歴代大賞受賞者

歴代の受賞者には、小野花子、築地俊造、松木富視雄、平山清司、新地美津子、渡部昭吾、高橋節子、後藤清子、当原ミツヨ、中野律紀、漆原栄美子、岡田光夫など、民謡界を代表する多くの歌い手が名を連ねています。

「日本民謡大賞」は、民謡界の発展に大きく貢献した番組であり、その歴史は日本の音楽文化史に貴重な足跡を残しました。

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