日比谷図書文化館

日比谷図書文化館：歴史と変遷

東京都千代田区日比谷公園に位置する千代田区立日比谷図書文化館は、日本の図書館史において重要な役割を果たしてきた施設です。1908年（明治41年）、東京市立日比谷図書館として開館。三橋四郎設計によるアールヌーボー様式の建物は、2万5000冊の蔵書を誇り、東京市立図書館の中心として機能しました。閲覧は有料でしたが、多くの市民に利用されました。

1923年（大正12年）の関東大震災では大きな被害を受けながらも倒壊を免れ、同年11月には再開館しています。その後、蔵書は10万冊に達するまでに増加しました。しかし、老朽化のため、1934年には建て替えが決定。しかし、日中戦争の勃発により、資材不足や政府による規制のため、改築は困難を極めました。1938年には閉館も発表されましたが、市民からの強い要望を受け、応急修理が行われ、1939年に工事が完了しました。

1943年（昭和18年）には東京都立日比谷図書館と改称。しかし、1945年（昭和20年）の空襲で、建物は全焼してしまいました。幸い、館長の先見性により、蔵書の大半は疎開しており、約40万冊が難を逃れました。しかしながら、20万冊以上の蔵書が失われたことは大きな損失でした。

戦後、1949年には京橋仮館舎で閲覧を再開。その後、1951年には土岐善麿が館長に就任し、新館建設に着手。1955年に一時移転を経て、1957年10月、現在の施設が落成しました。特徴的な三角形の建物は土岐善磨の発案によるものです。当初3階建てでしたが、1961年には4階部分が追加されました。

1978年には、統計資料の集計を行う利用者向けに電卓専用席を設置。これは、後の図書館におけるパソコン利用席の先駆けとなりました。2006年にはDOCOMOMO JAPAN選定 日[[本におけるモダン・ムーブメントの建築]]に選ばれるなど、建築的にも高い評価を受けています。

2009年、東京都から千代田区に移管され、千代田区立日比谷図書文化館として再出発しました。移管にあたり、改修工事が行われ、2011年11月に開館。従来の図書館機能に加え、博物館、学習、交流機能を統合した新しい施設として生まれ変わりました。この取り組みは、Library of the Year 2013優秀賞を受賞するなど、高い評価を得ています。

現在の日比谷図書文化館は、最新の設備と充実した蔵書を備え、地域住民にとってかけがえのない文化拠点となっています。その歴史は、日本の図書館の歴史、そして社会情勢の変化を反映しており、今後も地域に貢献していくことでしょう。北緯35度40分18.4秒 東経139度45分16.2秒という地理的な位置も、日比谷公園という緑豊かな環境に恵まれた図書館の存在感を際立たせています。

長い歴史の中で、関東大震災や空襲といった困難を乗り越え、幾度となく建て替えや改修を重ねながら、日比谷図書文化館は常に進化し続けてきました。その歴史は、単なる図書館の歴史にとどまらず、日本の近代史、そして図書館のあり方の変遷を示す貴重な資料となっています。

参考文献：『東京の近代図書館史』（佐藤政孝著、新風舎、1998年）

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