日産・バイオレット

日産バイオレット（VIOLET）

バイオレットは、日産自動車が1971年から1984年にかけて生産した中級小型乗用車です。この車両は、日産のブルーバードの系譜の中で新たに開発され、特にそのスタイルと性能で多くのユーザーに支持されました。バイオレットは、過去のモデルが抱えていた問題を解決し、より広い市場に適応する役割を果たしました。

概要

バイオレットは、その開発が始まった背景に、1971年8月に登場した610型ブルーバードUがありました。このモデルはブルーバードの上級モデルとして位置づけられたため、従来のブルーバードユーザーが切り替えを躊躇う事態が生じました。そこで、日産はこのニーズに応えるために、510型ブルーバードの後継車両を開発することになりました。バイオレットは、サニーとブルーバードUの中間モデルとして位置づけられ、710型という型式が割り当てられました。

初代710型（1973年-1977年）

初代710型は、1973年1月に登場し、キャッチコピーに「しなやかなクルマ」や「もう、なにかが始まっている。」が使われました。このモデルは、当初は4ドアセダン、2ドアセダン、2ドアハードトップの3つのボディタイプが用意され、その後5ドアのライトバンも追加されました。ホイールアライメントに関しては、前輪にマクファーソンストラット式独立懸架が採用される一方、スポーツグレードのSSSのみが510型ブルーバードと同様のセミトレーリングアーム式独立懸架を特徴としていました。

710型は、特徴的なファストバックスタイルを採用しましたが、後方視界の悪さが指摘され、4ドアセダンは後にノッチバックスタイルに大きく変更されました。また、タクシー仕様のモデルが市場に投入され、需要に応えることができました。710型は1976年7月まで販売され、その後810型ブルーバードへと移行しました。

2代目A10型（1977年-1984年）

1977年5月にはA10型にフルモデルチェンジが行われ、独自の型式が与えられ、販売が開始されました。このモデルは、4ドアノッチバックセダンや3ドアハッチバッククーペ、ライトバンといったバリエーションを提供し、1980年には5ドアハッチバックセダンが追加されました。バイオレットは、一般用や商用利用を目的とした多様なスタイルを持ち、前輪にはマクファーソンストラット式を、後輪には4リンクコイル式を搭載していました。

二代目モデルのバイオレットは、1980年代初頭にはスタイリングにおいて批判を受けることもあったものの、オーストラリアやラテンアメリカ市場では人気を得ていました。メキシコではダットサン・サムライという名前でローカライズされ販売され、この国で1984年まで生産されました。

3代目T11型リベルタ（1981年-1982年）

3代目バイオレットは1981年にリベルタとしてデビューしました。このモデルは前輪駆動の車両として新開発のCAエンジンを搭載し、4ドアセダンと5ドアハッチバックの形式で展開されました。リベルタは当時の先進的なスタイルを持っていましたが、未熟な前輪駆動技術により振動や走行性能の点で課題も存在しました。1982年には販売が終了し、実質的な後継車両としてN12型パルサーセダンが導入されました。

モータースポーツへの参加

バイオレットは、モータースポーツでも活躍し、特に710型はラリー競技において顕著な成績を残しました。1974年にはスランゴール・グランプリで優勝し、1977年にはDATSUN160Jとしてサザンクロスラリーでの成功を収めました。A10型もWRCにおける重要なマシンとして活躍し、1979年から1982年にかけてサファリラリーで4連覇を達成しました。これらの成績は、日産がスポーツイメージを確立する重要な要素となりました。

終わりに

バイオレットはその販売期間中に多くの実績と歴史を持ち、多様なユーザーに愛された車種でした。現在もその記憶は自動車愛好家の中で語り継がれています。

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