日産自動車村山工場

日産自動車村山工場は、かつて東京都武蔵村山市榎および立川市の一部に位置していた、日産自動車の主要生産拠点の一つでした。プラントコードは「5」が付与されており、その歴史は2001年（一部部品生産は2004年）まで続きました。

施設の概要

工場敷地は非常に広大で、その面積は約139万平方メートルに及び、東京都の立川市と武蔵村山市にまたがって広がっていました。工場の設立に伴い、周辺には労働者の受け入れ先として、1964年度から1966年度にかけて都営村山団地が建設されるなど、地域社会との関わりも深い施設でした。敷地の西部には、全長約4.25キロメートルのカーブとバンクを備えたオーバル状のテストコースが設けられており、生産された車両の走行性能試験などが行われていました。

工場で完成した車両は、陸送会社の担当者によって五日市街道を経由し、昭島駅北口近くの旧米軍接収地跡地に一時的に保管されていました。この場所から、キャリアカーを用いて全国の日産プリンス販売店や、川崎・横浜にある自動車運搬船の積み出し港へと輸送されていました。輸送を担った主な会社には、日産陸送株式会社（現：株式会社ゼロ）、弘和陸送株式会社（現：株式会社ゼロ）や、プリンス自動車工業時代からの世田谷陸送株式会社、麻生陸送株式会社、株式会社須山陸送などがありました。

工場の歴史

村山工場の始まりは、1962年にプリンス自動車工業の工場として操業を開始したことに遡ります。この時、プリンス自動車工業初の乗用車であるグロリアのラインオフが行われました。以来、プリンス・ロイヤルや伝説的なスカイラインなど、同社の主力乗用車がここで生み出されました。

1966年にプリンス自動車工業が日産自動車と合併して以降、村山工場は栃木工場や追浜工場と並ぶ、日産自動車の中核的な車両生産拠点としての役割を担うことになります。プリンス時代から引き継がれたグロリアやスカイラインに加え、ローレル、プレセア、マーチ、キューブといった、その時代を代表する日産の人気車種が多数生産されました。日産自動車村山工場としての累計生産台数は、およそ968万台に達しています。

しかし、1999年、経営再建を目指す日産リバイバルプランの一環として、工場閉鎖の方針が打ち出されました。これは、当時フランスのルノー社から最高執行責任者（COO）として日産に迎えられたカルロス・ゴーン氏主導による経営改革の中で決定された具体策の一つです。車両の生産は2001年に順次終了し、一部部品の生産が続けられた後、2004年には完全に閉鎖され、約40年間にわたる主力工場としての長い歴史に幕を下ろしました。車両生産機能は、FR車は栃木工場へ、FF車は追浜工場や九州工場（現：日産自動車九州）など、他の日産工場へと移管されました。

主な生産車種

村山工場では、多岐にわたる車種が生産されました。代表的な車種には以下のものがあります。

- グロリア
- スカイライン（R34型まで）
- スカイラインGT-R（BNR34型中期型まで）
- ダットサン・サニートラック
- ローレル（C35型中期まで）
- セフィーロ（A31型）
- ステージア（WGNC34型）
- プレセア（R11型）
- マーチ
- キューブ (Z10型の一部期間)
- ティーノ
- フォークリフト
- 日産・ホーマー（2トントラック）
- プリンス・クリッパー（トラック）
- プリンス・マイラー（輸出専用ボンネットトラック）

閉鎖後の跡地利用

工場閉鎖後、広大な跡地は売却や譲渡が行われ、再開発が進められました。建屋や設備は撤去されましたが、跡地全体が開発されたわけではなく、特にテストコース跡など、多くの部分は現在も広大な空き地として残されています。上空からの写真では、かつてのテストコースの形状など、工場の名残を見ることができます。

跡地の約3分の1を占める北部エリア、旧テストコースの北側部分には、商業施設であるイオンモールむさし村山や、武蔵村山病院、カレスト村山（カーミナル東京・東京日産新車のひろば村山店）、わらべや日洋東京工場などが建設され、地域住民の生活を支える施設が整備されました。このエリアの一角にはプリンスの丘公園が設けられ、工場があった歴史を伝える記念碑が設置されています。

残る約3分の2にあたる、テストコース中央部や南側、そして敷地東側の旧工場区画は、宗教法人真如苑に譲渡されました。この区画については、所有者である真如苑を含む「跡地利用協議会」（五者協議会）が組織され、「プロジェクトMURAYAMA用地」としてまちづくりの観点からの土地利用が繰り返し検討されています。長らく利用が進んでいませんでしたが、2013年8月にはサッカーグラウンド「真如苑芝生ひろば」（現：真如ヤーナの一部）が開設され、地元のスポーツ活動に利用されています。2022年5月には真如苑所有地の正式名称が「真如ヤーナ」と定められました。

また、武蔵村山市役所の跡地への移転についても検討が進められており、2020年7月には基本計画が策定されるなど、将来的な土地利用に向けた動きが見られます。

日産自動車村山工場は、日本の自動車産業史において重要な役割を果たした拠点であり、その跡地は現在も地域のまちづくりにおいて注目されています。

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