日親

日親（にっしん）

日親（1407年 - 1488年）は、室町時代に活躍した日蓮宗の僧侶です。埴谷重継の子として生まれ、久遠成院と号しました。彼は「不受不施義」を初めて唱えた人物として知られています。

生涯

日親は上総国（現在の千葉県）に生まれ、妙宣寺で父の弟である日英に師事し、その後中山法華経寺に入門しました。1427年に京都へ上り、鎌倉や京都を中心に布教活動を展開しました。

1433年には中山門流の総導師として肥前国（現在の佐賀県、長崎県）へ赴き、門徒を指導しましたが、その厳格な折伏が反発を招き、同流から破門されるという経験をしました。しかし、1437年には再び京都へ上り、本法寺を開きます。

日親は諸寺院を日蓮宗に改宗させようと試み、6代将軍足利義教に説法する機会を得ましたが、その際に他宗からの喜捨を説いたことが義教の意にそぐわず、建言を禁止されてしまいます。1440年2月、禁を破ったとして投獄され、本法寺は破却されました。この際、日親は拷問を受け、真っ赤に焼けた鍋を被せられたまま説法を続けたという伝説が生まれ、「鍋かぶり上人」「鍋かぶり日親」と呼ばれるようになりました。

1441年の嘉吉の乱で足利義教が暗殺されたことにより、日親は赦免され、本法寺を再建しました。しかし、1460年に肥前で布教したことが原因で再び本法寺を破却され、8代将軍足利義政から上洛命令を受けます。1462年11月、千葉元胤によって京都へ護送され、細川持賢邸に禁錮されますが、翌1463年には赦免され、町衆の本阿弥清延の協力を得て本法寺を再々建しました。1488年に入寂、享年82歳でした。

日親と不受不施義

日蓮の法華経に対する純粋な姿勢は、南北朝の戦乱や室町時代に入り、宗派が勢力を拡大していく過程で、他宗派との妥協や他宗派の信者からの施しを受けるなど、次第に変質していきました。特に中山法華経寺に代表される中山門流は、本来他宗派に対して比較的寛容であったとされ、同寺の寺宝である立正安国論が律宗寺院に貸し与えられていたという記録もあります。このような状況の中で、日親は不受不施を強く主張しました。

日親の活動

日親は京都の一条戻橋で辻説法を始めましたが、比叡山延暦寺や将軍家の帰依を受けていた臨済宗などの他宗派から激しい弾圧を受けました。また、日親は法華経によって当時の乱れた世の中を救済しようと、足利将軍家の日蓮宗への改宗を目論み、1440年に『立正治国論』を著して直訴を試みましたが、投獄され、舌先を切り取られたり、真っ赤に焼けた鉄鍋を頭に被せられるなどの拷問を受けました。この鍋は、伝承によれば終生頭から取れることはなかったといわれています。

著作

『折伏正義抄』 - 1438年
『立正治国論』 - 1440年
『埴谷抄』 - 1470年
『伝燈抄』 - 1470年
『本法寺縁起』 - 1487年

関連事項

寺院

常国寺
一乗寺（大阪府高槻市）
妙隆寺（神奈川県鎌倉市）
広宣寺（神奈川県小田原市）
本延寺（石川県七尾市）
久遠成寺（兵庫県加東市）
本寿寺（京都市東山区） - 日親の墓所

人物

埴谷重義、埴谷重継
日祇（日親の弟子、1488年没）
日澄（日親の弟子、1515年没）
日英（日親の師、1346年‐1423年）
日國（日親の兄、1475年没）
日祝（日國の弟子、1437年‐1513年）
* 日有（法華経寺七世で日親と対立、1448年没）

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