日韓通信業務合同

日韓通信業務合同とは

日韓通信業務合同（にっかんつうしんぎょうむごうどう）は、正式には「韓国通信機関委託ニ関スル取極書」と称される協定であり、1905年（明治38年）に大日本帝国が韓国（大韓帝国）の通信業務を日本側に委託させたものです。この協定は、朝鮮半島における日本の影響力を拡大する上で重要な役割を果たしました。

背景：朝鮮の郵便の歴史

郵便事業の開始と挫折

朝鮮では1884年11月18日に郵便事業が開始され、郵征総局がソウルに設置されました。郵便切手は日本の大日本帝国印刷局に発注されました。洪英植らの開化派が甲申政変を起こしますが失敗し、郵便事業は短期間で閉鎖されました。

郵便事業の再開とフランスの関与

1895年7月、朝鮮の郵便事業は再開され太極切手が発行されました。その後、フランス人クレマンセーが通信事業の顧問として招聘され、1900年には韓国政府は通信院を設置し万国郵便連合（UPU）に加盟し、国際的郵便網に入りました。

在朝鮮日本郵便局の設置

1876年の日朝修好条規締結により、日本は釜山に居留地を獲得し、郵便局が設置されました。その後、朝鮮各地に日本による郵便局が設置され、日本切手が使用されました。1900年1月1日には在朝鮮日本郵便局で発売される切手には「朝鮮」という文字が加刷されました。

韓国政府による郵便事業が開始された後も、日本郵便局の業務は継続・拡大され、朝鮮半島では日韓両政府が経営する通信事業体が並存する状態となりました。

日韓通信合同

日露戦争と第一次日韓協約

1904年2月、日露戦争が勃発し、日本は韓国との間で日韓議定書を締結しました。これにより、日本は朝鮮半島各地で軍隊を展開できるようになり、第一次日韓協約により、韓国政府に財政と外交の日本人顧問を受け入れさせました。

日本による郵便事業の接収

第一次日韓協約により派遣された財政顧問・目賀田種太郎は、韓国の通信事業を日本に委託させるように迫りました。目賀田は、通信事業が赤字であることを理由に挙げましたが、これは設備投資が嵩んだためであるとの見方もあります。読売新聞は、韓国の通信機関の不備を理由に、日本への委託を主張しました。

韓国国内には反対の声もありましたが、1905年4月1日に「韓国通信機関委託ニ関スル取極書」が調印され、韓国政府が管轄していた郵便・電信電話事業が日本政府に委託されることになりました。これは事実上の接収であり、朝鮮半島における情報伝達網を日本の管理下に置くものでした。

5月18日から日本側による通信機関の接収が始まり、7月1日に完了しました。接収作業後、韓国通信院の職員1044人のうち773人が日本の郵政当局に引き継がれましたが、残りの271人は解雇されました。その後、抗日武装勢力の攻撃目標にもなりました。

日韓通信業務合同紀念切手

日本の逓信省は、1905年7月1日の接収完了を記念して『日韓通信業務合同紀念』と題する記念切手を発行しました。この切手は、日本の記念切手としては4番目で、皇室の菊花紋章と李王家の李花紋章が対等に描かれていました。

この切手は250万枚が製造され、そのうち100万枚が韓国、台湾、中国国内の日本郵便局に納入されました。韓国国内での販売枚数は82万枚でした。

その後の朝鮮半島の切手

従来の韓国切手は1905年6月30日をもって売り捌きが中止され、1909年8月31日をもって使用禁止になりました。1910年の韓国併合を前に、日本切手が朝鮮全土で使用されるようになりました。1905年7月から1910年までは、日本の保護国であるとはいえ、そのまま相手国の切手が全体で使われたのは異例でした。

日本接収以後の朝鮮半島では韓国独自の年号として「隆熙」が用いられていましたが、郵便物の消印の年号は明治元号が使われていました。朝鮮半島では1946年に南北朝鮮で切手が発行されるまで日本切手の使用が続きました。

備考

1991年に日本の郵政省が日本近代郵便の120年史を出版しましたが、外地、特に朝鮮半島に関係する郵便事情については全く触れていませんでした。

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