日高東別駅

日高東別駅：日高地方の小さな駅の歴史と周辺環境

日高東別駅は、北海道日高地方に位置する、かつて北海道旅客鉄道（JR北海道）日高本線に存在した駅です。1958年（昭和33年）7月15日に開業し、2021年（令和3年）4月1日に廃駅となりました。駅名は、その所在地である地名に由来しています。同音の駅名が他に多く存在したため、旧国名である「日高」を冠したという経緯があります。

駅名の由来となった地名は、明治時代の地図に「トイペッ」として記載されている支流に遡ります。これはアイヌ語の「toy-pet」（土・川）を語源とすると言われ、当初は「遠別」という字があてられていましたが、昭和期以降「東別」に変化しました。アイヌ語の解釈については諸説ありますが、現地に沼地がないことから「食用土」と「川」を意味する解釈が有力視されています。

日高東別駅は、単式ホーム1面1線の地上駅でした。駅舎はなく、ホーム中央付近にコンクリートブロック造りの待合所が2つ設置されていた簡素な造りでした。静内駅が管理する無人駅であり、駅銘板も設置されていなかったため、道路からは駅と認識するのが難しい状況でした。トイレ棟は待合所とは別に設置されていました。

開業当初から無人駅として旅客のみを取り扱い、国鉄分割民営化後もJR北海道の駅として運営を続けました。しかし、2015年（平成27年）1月、大雪による高波被害と土砂流出により、厚賀駅 - 大狩部駅間で列車運行が度々休止を余儀なくされました。この影響で、日高東別駅もバス代行輸送の対象となり、2018年（平成30年）4月1日からは、代行バスの上り1本と下り1本が当駅を通過するようになりました。そして、2021年（令和3年）4月1日、鵡川駅 - 様似駅間の廃止に伴い、日高東別駅は廃駅となりました。

駅周辺は牧草地帯が広がり、多くの牧場と農家が点在するのどかな風景が広がっています。特産品として知られる「東別イチゴ」も、この地で栽培されています。駅へのアクセスは、北海道道796号西端春立線を利用します。駅周辺には、日高国際カントリークラブや天狗山、布辻川といった自然豊かなスポットも存在します。

日高東別駅の利用状況については、年間の乗車人員データが断片的に残されています。バス代行期間中は、バスと列車の集計が別々に行われたり、集計期間が年によって異なったりと、正確な利用状況を把握するのが困難な状況でした。

日高東別駅は、その歴史と周辺環境、そして廃線に至る経緯を知ることで、日高地方の地域社会や交通事情の一端を垣間見ることができる貴重な存在でした。短いながらも、多くの人の思い出が詰まった駅として、その歴史は人々の心に刻まれています。また、アイヌ語地名に由来する駅名や、簡素ながらも利用者の便宜を図るための工夫が凝らされた駅構造なども、興味深い点です。日高本線の歴史を知る上で、重要な位置を占める駅であったと言えるでしょう。

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