旧函館区公会堂

旧函館区公会堂は、北海道函館市元町に位置する、明治時代に建てられた歴史的建造物です。1910年（明治43年）に竣工したこの建物は、左右対称でコロニアルスタイルの美しい外観が特徴で、設計は小西朝次郎が担当しました。その文化的価値から、国の重要文化財に指定されています。

歴史

公会堂の建設は、1907年（明治40年）の函館大火がきっかけでした。この大火で富岡町町会所や商業会議所が焼失したため、岡本忠蔵ら地元の有志が中心となり、新たな集会所の建設を目指して「公会堂建設協議会」が組織されました。建設資金は当初不足していましたが、初代相馬哲平からの50,000円の寄付により、建設が実現しました。

建設地をめぐっては様々な案が出ましたが、最終的に旧・女子高等小学校跡に決定しました。1910年（明治43年）に、工費58,000円余りをかけて完成した公会堂は、町会所としての役割のほか、商業会議所の事務所としての利用も想定されていました。

明治から昭和にかけて、皇族の行啓の際の宿泊・休憩所としても使用されました。1911年（明治44年）には皇太子時代の大正天皇が、1922年（大正11年）には摂政宮時代の昭和天皇が訪れています。また、1951年（昭和26年）から1956年（昭和31年）までは函館地方海難審判庁が置かれ、洞爺丸事故の海難審判の会場となりました。

建築様式

旧函館区公会堂は、北海道特有の木造2階建ての擬洋風建築であり、アメリカのコロニアル様式を取り入れた洋館です。左右対称のポーチ、回廊で結ばれた中央のベランダ、桟瓦葺きの屋根などが特徴です。外壁は下見板張りで、ブルーグレーとイエローの配色が目を引きます。この配色は、19世紀後半にアメリカで流行したヴィクトリアン様式の影響を受けています。

ポーチの袖妻には唐草模様が施され、玄関や回廊を支えるコリント式の円柱の柱頭には洋風の装飾が施されています。これらの装飾からは、当時の日本人職人の洋風建築技術の習得意欲がうかがえます。

内部は、1階に大食堂や球戯室、2階には大広間、御座所、御寝室、御召替室などが設けられています。本館に付属する木造平屋建の建物は渡り廊下で繋がっています。

近年の改修

1980年（昭和55年）から1982年（昭和57年）にかけて、初の解体修理復元工事が行われ、当初の姿を取り戻しました。その後も、2018年（平成30年）から2021年（令和3年）にかけて耐震補強を含む大規模な保存修理工事が実施され、2021年（令和3年）4月にリニューアルオープンしました。

現在の利用

現在、旧函館区公会堂は一般公開されており、内部を見学することができます。また、「函館ハイカラ衣装館」が併設されており、ドレスやタキシードなどの衣装をレンタルして、館内で写真撮影を楽しむことができます。

周辺情報

旧函館区公会堂の周辺には、元町公園、函館市旧イギリス領事館、旧相馬邸、カトリック元町教会などの観光スポットがあります。

旧函館区公会堂は、函館の歴史と文化を伝える貴重な建造物であり、訪れる人々に明治時代の雰囲気を伝えています。

沿革

1907年（明治40年）8月 - 大火により町会所が焼失
1907年（明治40年）9月 - 新たな集会所建設の協議会が発足
1908年（明治41年）12月 - 初代相馬哲平が5万円を寄付
1909年（明治42年）2月 - 技師の小西朝次郎が各地の建築を調査
1909年（明治42年）5月 - 公会堂建設工事に着手
1909年（明治42年）10月 - 上棟式、竹内区長が東京で家具を視察
1910年（明治43年）9月 - 開堂式
1911年（明治44年）8月 - 皇太子（のちの大正天皇）が行啓
1922年（大正11年）7月 - 摂政宮（のちの昭和天皇）が行啓
1922年（大正11年）8月 - 市制施行祝賀式
1927年（昭和2年）5月 - 芥川龍之介と里見弴が講演、聴衆は1000人だった
1934年（昭和9年） - 函館市役所本庁舎焼失に伴う仮庁舎として一時的に使用
1945年（昭和20年）11月 - 函館連隊区司令部が移転
1946年（昭和21年）1月 - 国立湯川病院・国立函館病院が移転
1951年（昭和26年）3月 - 函館地方海難審判庁が開庁
1957年（昭和32年）10月 - 公会堂としての利用が再開
1971年（昭和46年）3月 - 北海道有形文化財に指定
1974年（昭和49年）5月 - 国の重要文化財に指定
1980年（昭和55年）10月 - 保存修理に着手
1980年（昭和55年）12月 - 附属棟が重要文化財に追加指定
1982年（昭和57年）11月 - 保存修理完了
1983年（昭和58年）4月 - 一般公開を開始
1989年（平成元年）10月 - 天皇・皇后が行幸
2018年（平成30年）10月 - 耐震補強を含む保存修理に着手
2021年（令和3年）3月 - 保存修理完了
2021年（令和3年）4月 - リニューアルオープン

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