旧和中散本舗

旧和中散本舗の歴史と建築について

滋賀県栗東市六地蔵にある旧和中散本舗は、江戸時代から続く歴史的な薬局であり、特に胃薬「和中散」の製造と販売で有名です。この場所は1949年に国の史跡に指定され、さらに大角家住宅としての主屋や正門、隠居所の3棟は1954年に国の重要文化財に選ばれています。また、庭園は2001年に国の名勝に認定されるなど、文化的な価値が高い歴史的建造物です。

旧和中散本舗の背景

旧和中散本舗が店舗を構えている六地蔵は、東海道の草津宿と石部宿の中間に位置しており、昔は宿泊施設を兼ねた間の宿として知られていました。ここには、「和中散」を扱う店舗が5軒ありましたが、その中でも大角家は「和中散本舗」の名をとり、特に注目を集める存在でした。大角家は、慶長元年（1596年）に現在の地に移り、『東海道名所図会』にも紹介されるほどの重要な店舗でした。さらに、慶長16年（1611年）に徳川家康が訪れた際にこの薬を薦められ、その効果で腹痛が治ったという伝説も残されています。

建物の構成

大角家の建物は旧東海道の南北に広がり、南側には街道に面した主屋、そしてその隣に表門があります。北側には隠居所や馬繋、薬師堂などが存在し、それぞれの建物が有機的に配置されています。主屋は「店舗、製薬所、台所、居間」部と、奥の「玄関、座敷」部に分かれています。特に「店舗、製薬所、台所、居間」部は17世紀末に建てられ、その後の「玄関、座敷」部は18世紀前半に建設されたと考えられています。この構造によって、商業と居住の機能が分けられています。

店舗と製薬機

店舗内には土間があり、左側には「東みせ」、右側には「西みせ」が設けられています。「西みせ」には動輪や石臼などの製薬機が残っており、これは製薬の際に使用されていた古い技術の証です。動輪は直径3.6メートルもあり、当人が内部に入って回転させることで動力が石臼に伝わる仕組みになっています。

玄関と座敷の構成

「東みせ」には薬医門形式の正門があり、その奥には千鳥破風を持つ「玄関、座敷」部があります。この空間は高貴な来客を迎えるために設計されており、庶民の居住用ではありません。「玄関の間」には10畳の広さがあり、正面には鶴亀の浮彫が施された欄間があります。その奥には座敷と次の間が続き、最後には庭を見渡せる上段の間があります。この庭は国の名勝としても知られ、明治天皇などの著名な人々が訪れた記録も残っています。

隠居所の紹介

隠居所は江戸中期に建てられたと考えられ、南側に突出した部分が特徴です。ここは比較的小ぢんまりとした構造で、6畳の部屋や仏間、台所が配置されています。これは家族が静かに過ごすための場所だったのでしょう。

文化財としての価値

旧和中散本舗は、その建物や庭園が文化財として評価されており、地域の歴史と文化の重要な象徴となっています。また、交通アクセスも便利で、JR草津線の手原駅からくりちゃんバスで8分と、訪れやすい立地です。近隣に訪れた際には、ぜひその歴史に触れてみることをお勧めします。

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