旧野首教会

旧野首教会（きゅうのくびきょうかい）

旧野首教会は、長崎県五島列島、小値賀町に属する野崎島に位置するカトリックの聖堂です。現在、島は無人島となっており、教会としての役割は終えましたが、その歴史的、文化的価値から、長崎県指定有形文化財に指定されています。また、ユネスコの世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を構成する「野崎島の集落」（野首集落跡）の一部として、世界的にその価値が認められています。

歴史

野崎島におけるキリスト教の歴史は、1800年前後の寛政時代に、大村藩領から移住してきた2家族7人のキリシタンによって始まりました。彼らは平戸藩領であった野崎島の野首地区に移り住み、信仰を守り続けました。

明治時代に入っても、政府は徳川幕府の禁教政策を踏襲したため、野崎島の信徒たちは迫害を受けました。1868年には、島根県隠岐島沖の竹島を目指して脱出しようと試みましたが失敗に終わります。翌年には平戸に連行され弾圧を受けますが、平戸監獄服役中に信仰の自由が認められ、島に戻ることができました。

それまで木造の教会を使用していた信徒たちは、1907年（明治40年）、野首地区の17世帯が協力して資金を調達し、本格的な教会建築に着手します。翌1908年（明治41年）に、煉瓦造りの美しい野首教会が完成し、同年10月25日に献堂式が行われました。この教会の設計・施工を手掛けたのは、五島列島をはじめ長崎県とその周辺で数多くの教会建築に携わった鉄川与助です。野首教会は、彼が初めて手掛けた煉瓦造りの聖堂として知られています。

野崎島の島民は、最盛期には約650人を数えましたが、高度経済成長期に入ると減少の一途をたどります。1971年（昭和46年）には、野首地区に残っていたカトリック信徒6世帯31人が島を離れ、教会は無人となりました。その後、教会は荒廃しましたが、1989年（平成元年）に長崎県指定有形文化財に指定され、小値賀町によって修復されました。

野崎島には、野首地区の他に、森を挟んで4キロ南の舟森（瀬戸脇）にもキリシタン集落が存在しました。こちらには瀬戸脇教会がありましたが、1966年（昭和41年）に最後まで残っていた住民45人が島を離れたため、解体されました。

1990年代まではわずかに住民が残っていましたが、2001年以降、野崎島は完全に無人島となっています。現在、教会の管理は、野首地区の廃校を利用した特定非営利活動法人おぢかアイランドツーリズム協会の野崎島自然学塾村に委託されています。野崎島への渡島には、同協会への事前連絡が必要です。教会参観を希望する場合は、連絡時に申し込めば、当日施錠を解いてくれます。

建物概要

構造：煉瓦造平屋、瓦葺き屋根
天井：リブ・ヴォールト天井
設計・竣工：鉄川与助
所在地：〒857-4709 長崎県北松浦郡小値賀町野崎郷692-1

アクセス

野崎島へは、小値賀港から定期船またはチャーター船で渡ることができます。

その他

教会の保護者：聖フランシスコ・ザベリオ

参考文献

三沢博昭『大いなる遺産 長崎の教会』（智書房、2000年） ISBN 4434002651
『長崎遊学2 長崎・天草の教会と巡礼地完全ガイド』（長崎文献社、2005年） ISBN 978-4888510912

関連項目

カトリック長崎大司教区
野崎島
長崎の教会群とキリスト教関連遺産

外部リンク

長崎県ホームページ（長崎県の文化財・旧野首教会）
旧野首教会 おぢかアイランドツーリズム

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