早く家へ帰りたい

早く家へ帰りたい (Homeward Bound)

サイモン＆ガーファンクルが1966年に発表したシングル「早く家へ帰りたい」（原題: Homeward Bound）は、彼らのキャリア初期を代表する楽曲の一つであり、故郷への切ない思いを歌った作品として広く知られています。

楽曲誕生の背景

この楽曲は、ポール・サイモンの個人的な経験から生まれました。1965年当時、彼はロンドンを拠点に音楽活動を行っており、イングランド各地を巡るソロ・ツアーを実施していました。旅の道中、見慣れない土地での孤独感や、遠く離れた故郷ニューヨークへの強い郷愁が募り、その時の感情がこの「早く家へ帰りたい」の歌詞とメロディの源泉となったと言われています。

リリースとチャートでの成功

「早く家へ帰りたい」は、1966年にリリースされたアルバム『サウンド・オブ・サイレンス』のためにレコーディングされましたが、最終的にこのアルバムには収録されませんでした。しかし、楽曲の持つ魅力は高く評価され、1966年1月19日に単独でシングルとしてリリースされる運びとなりました。シングルのB面には「木の葉は緑（Leaves That Are Green）」が収められています。

シングル発表後、この曲は大きな反響を呼び、アメリカのビルボードホット100チャートで最高5位、イギリスの全英シングルチャートでは最高9位を記録しました。特にイギリスにおいては、サイモン＆ガーファンクルにとってこれが初のチャートイン作品となり、彼らがイギリスで人気を獲得する上で重要な一歩となりました。シングルとしての成功を受け、同年の10月24日に発売された次作アルバム『パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム』に改めて収録されることとなり、アルバム収録曲としても広く聴かれるようになりました。

ライブやコラボレーションによるバージョン

「早く家へ帰りたい」は、サイモン＆ガーファンクルのライブ活動や、ポール・サイモンのソロ名義でも度々演奏され、様々なライブ音源が存在します。

ポール・サイモンのライブアルバム『ライヴ・ライミン』（1974年）には、ノートルダム大学またはカーネギー・ホールでの演奏が収録されています。
1976年11月20日には、テレビ番組『サタデー・ナイト・ライブ』に出演したポール・サイモンが、ゲストのジョージ・ハリスンと共にこの曲を披露しました。この共演音源は、後にチャリティ・アルバム『ルーマニアン・エンジェル・アピール〜ノーバディーズ・チャイルド』（1991年）に収められています。
サイモン＆ガーファンクルが再結成した伝説的なライブ『The Concert in Central Park』（1982年、録音は1981年9月19日）でも演奏され、このライブアルバムは世界的な成功を収めました。
近年の例としては、2020年6月10日に開催されたテキサス州オースティン支援のためのベネフィット・ライブストリーミング「A Night for Austin」において、ポール・サイモンが自身の自宅からこの曲を配信演奏しました。

多様なアーティストによるカバー

「早く家へ帰りたい」は、その普遍的なテーマと美しいメロディから、国内外の非常に多くのアーティストによってカバーされ続けています。発表年の1966年には既に複数のカバーバージョンが登場しており、その後も様々なジャンルのアーティストが独自の解釈でこの曲を歌っています。以下に、主なカバーバージョンをいくつか紹介します。

チャド＆ジェレミー - 『Distant Shores』（1966年）
メル・トーメ - 『Right Now!』（1966年）
ペトゥラ・クラーク - 『I Couldn't Live Without Your Love』（1966年）
シェール - 『Chér』（1966年）
ピーター＆ゴードン - 『Peter and Gordon』（1966年）
ディノ、デシ＆ビリー - 『Memories Are Made of This』（1966年）
リチャード・アンソニー - EP「Le soleil ne brille plus」（1966年）※フランス語詞「Un autographe, SVP」
クリフ・リチャード - 『Don't Stop Me Now!』（1967年）
グレン・キャンベル - 『By the Time I Get to Phoenix』（1967年）
サンディ・ショウ - 『The Sandie Shaw Supplement』（1968年）
デイヴィ・グレアム - 『Hat』（1969年）
ハリー・ベラフォンテ - 『Homeward Bound』（1970年）
森山良子 - 『ビートルズ、S&Gを歌う』（1971年）
ジャーメイン・ジャクソン - 『Jermaine』（1972年）
井上陽水 - 映画『限りなく透明に近いブルー』サウンドトラック（1979年）
ホフマン＆ホフマン - 『In deiner Straße』（1980年）※ドイツ語詞「Einmal nach Haus」
ウィリー・ネルソン - 『Take It to the Limit』（1983年）
ローナン・キーティング - 『Winter Songs』（2009年）

このように、「早く家へ帰りたい」は、オリジナル発表から半世紀以上を経てもなお、多くの人々に愛され、様々な形で再生産され続けている、時代を超えた名曲と言えるでしょう。

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