早岐瀬戸

早岐瀬戸（はいきせと）

早岐瀬戸は、長崎県佐世保市の東部に位置し、大村湾と佐世保湾を結ぶ全長約11kmの海峡です。佐世保市早岐地区と針尾島の間に南北に伸びています。大村湾と佐世保湾を繋ぐ海峡は、この早岐瀬戸と針尾瀬戸の2つのみです。

古くは「速来門（はやきのと）」と呼ばれ、ワカメの産地として知られていました。現在では、伝統的な早岐茶市や、カヤックでの急流下り「早岐ウェーブ」が有名です。

特徴

早岐瀬戸は、平均幅が約125mと狭く、水深も約4mと浅いため、大型船舶の航行は困難です。観潮橋をはじめとする桁下の低い橋梁も、航行の妨げとなっています。しかし、この地形が独特の景観を生み出しており、多くの人々を魅了しています。

瀬戸の大村湾側には、オランダの街並みを再現したテーマパーク「ハウステンボス」があります。観潮橋は、瀬戸の最も狭い場所に架けられており、干満によって変化する潮流を間近に観察できます。初代の観潮橋は、帆船の航行のために開閉式でしたが、現在は2代目の橋が架かっています。

観潮橋は、かつて本土と針尾島を結ぶ唯一の橋であり、交通渋滞が慢性化していました。針尾海兵団や海軍兵学校針尾分校のために架けられた針尾橋の改修、針尾バイパスの開通などにより、交通状況は改善されましたが、ラッシュ時には依然として渋滞が発生します。そのため、佐世保市広田2丁目と有福町を結ぶ瀬戸中央橋が2009年に開通し、更なる渋滞緩和が期待されています。

観潮橋の下では、カヤック愛好家が急流下りを楽しんでいます。また、観潮橋は映画のロケ地にもなりました。水深が浅いため、早岐港には漁船のみが停泊しています。干拓事業や工業団地整備事業によって、海岸線の多くが埋め立てられましたが、現在も干潮時には干潟が現れます。佐世保市の海岸線の多くはリアス式海岸ですが、早岐瀬戸には砂浜や干潟特有の生態系が残されており、貴重な自然環境となっています。大村湾の水質汚濁は深刻ですが、早岐瀬戸は水深が浅く、河川からの流入もあるため、比較的良好な水質を保っています。多様な魚介類が生息しており、カブトガニも生息しています。

歴史

「肥前国風土記」には、「速来門」という地名が記述されており、ワカメの産地であったことが記されています。この速来門が、現在の早岐瀬戸であると考えられています。

1586年、大村純忠と松浦鎮信の合戦の際、大村勢は広田城を迂回するために早岐から上陸し、井手平城を落城させました。しかし、帰路に広田城を包囲したものの、松浦勢の逆襲に遭い、壊滅的な打撃を受けました。

江戸時代の干拓事業によって、瀬戸の幅はほぼ均一化され、糸繰新田、大塔新田、早岐新田などの新田が開かれました。早岐港は、針尾島と本土を結ぶ渡し場として、また三川内焼の積出港として発展しました。中世には、山海の産物を持ち寄って物々交換をする「早岐茶市」が自然発生し、現在も毎年5月から6月にかけて開催されています。

明治時代には、九州鉄道が早岐駅まで開通し、大村駅まで延長されるまでの間、対岸の長与駅まで連絡船が運航されました。日露戦争開戦時には、歩兵第24旅団が早岐瀬戸の勝磯から大陸へ出撃しました。1944年には、針尾海兵団が開設され、後に海軍兵学校針尾分校も併設されました。敗戦後、針尾海兵団は引揚者援護局に転用され、引揚者は対岸の南風崎駅から故郷へと帰っていきました。

戦後、新田を工業団地に転用する計画が進められましたが、工業用水の確保が難しく、計画の多くは頓挫しました。その中で、赤子新田はハウステンボスとして生まれ変わりました。

早岐瀬戸は、歴史と自然が調和した、魅力あふれる場所です。

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