明治公園のスダジイ

明治公園のスダジイ

東京都新宿区の明治公園にそびえ立つスダジイの巨木は、その長い歴史と数奇な運命を物語っています。推定樹齢は350年から400年とされ、江戸時代には柳沢家の屋敷内にあったと伝えられています。この木は、過去に二度の移植を経験し、現在では聖徳記念絵画館近くでその姿を見ることができます。

由来と二度の移植

このスダジイは、元々雪印メグミルク株式会社（旧雪印乳業東京支店）の敷地内に生育していました。その場所は、江戸時代には柳沢安忠（柳沢吉保の父）が住んでいた屋敷跡であり、地元の人々はこの木を「シイの木屋敷」と呼び、付近の小道を「シイの木横町」と名付けて親しんでいました。

樹勢が盛んな頃には、東西約18メートル、南北に7-8メートルにも枝を広げていたとされ、その巨体は、太田道灌が鷹狩の目印にしたという逸話や、旅人の目標にもなっていたと言われています。明治時代末期には政治家の小泉策太郎、その後は外交官の長岡春一がこの屋敷を住まいとしました。1957年にはクロバー乳業がこの地を買い取り、翌年雪印乳業の所有となりました。

1964年、雪印乳業が社屋を改築する際、このスダジイが工事の妨げになることが判明しました。当初、老木であることから伐採も検討されましたが、地元住民の強い要望を受け、約25メートル離れた新社屋の玄関前に移植されることになりました。移植作業は困難を極め、多くの植木屋が依頼を断る中、最終的に荒木町の植木屋が引き受け、神主によるお祓いを行った上で、200人もの職人が携わり、大掛かりな移植工事が行われました。その後、1996年には都市計画による道路拡張のため、約3キロメートル離れた明治公園へと再び移植されました。

三度目の移植

明治公園に移されたスダジイは、高さ5.5メートル、根元の直径4.7メートルに成長し、大きな枝を広げ、地域の人々から愛される存在となりました。1984年には新宿区の天然記念物にも指定されています（指定名称は「シイ」）。

しかし、2015年、東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う新国立競技場建設工事の影響で、三度目の移植を余儀なくされました。入札の結果、株式会社富士植木が移植工事を請け負い、2014年から根回し作業を行い、2015年6月、400トンクレーンを使ってトレーラーに積み込み、数百メートル離れた聖徳記念絵画館近くへ夜間に運搬されました。

新国立競技場の建設に伴い、明治公園内の約1500本の樹木のうち、約1280本が伐採される予定であった中、このスダジイは、その歴史的価値と地域の象徴として、移植されることになりました。

交通アクセス

所在地: 東京都新宿区霞ヶ丘町 明治神宮外苑

交通:
JR総武線・信濃町駅より徒歩3分
地下鉄青山一丁目駅・外苑前駅より各徒歩10分
* 地下鉄国立競技場駅より徒歩5分

このスダジイは、過去の歴史を物語る生きた証人として、これからもその姿を私たちに見せてくれるでしょう。

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