明治大学漫画研究会

明治大学漫画研究会（略称：明大漫研）は、1954年に設立された明治大学の大学公認文化芸術系サークルです。日本の大学において、漫画をテーマとするサークルとしては草分け的存在の一つであり、その長い歴史の中で数多くの著名な漫画家やクリエイターを輩出してきました。

設立と歴史的意義

明大漫研が活動を開始した1954年は、戦後の復興が進み、幼少期から漫画に親しんだ世代が大学に進学し始めた時期と重なります。こうした背景の中、漫画同人誌の発行や研究会といった形で、アマチュアとプロが活発に交流する文化が芽生えつつありました。

明大漫研の創設は、後の大学における漫画系サークルの設立に影響を与えたとされ、早稲田大学などに同様のサークルが誕生するきっかけの一つとなりました。そして、翌年には大学の枠を超えた連携組織「大学漫画研究会連盟」が発足するなど、日本の大学における漫画文化の発展を牽引する存在だったと言えます。

主な活動

明大漫研は、主な活動として公式機関紙『MORE』を年に二度発行しています。この機関紙は、部員の作品発表の場であると共に、サークルの歴史や活動を伝える媒体となっています。

また、日本最大級の同人誌即売会であるコミックマーケットには、その創成期から継続的に出展しています。初期からの参加サークルの一つとして、『MORE』を頒布するなど、長年にわたり日本の同人誌文化やイベントの成長を支えてきました。

大学内の関連組織と人物

明治大学内には、明大漫研の他にも漫画やサブカルチャーに関連する活動を行う組織が存在します。例えば、明治大学SF研究会はSF系の漫画も活動領域としており、明大漫研の出身者ではないものの、漫画業界で活躍する多くのOBがいます（米澤嘉博氏、三田紀房氏、新井英樹氏など）。また、生田キャンパスには「明治大学生田漫画研究会」が別に活動しています。

漫画家の岩代俊明氏が高校時代に少年ジャンプの賞を受賞した際、進学先について編集者から明大漫研を薦められたというエピソードも残されており、業界内での認知度の高さが伺えます。

コミックマーケットとの深い繋がり

明大漫研は、コミックマーケットとは特に深い関わりを持っています。1980年から2006年まで長きにわたりコミックマーケット準備会代表を務め、「コミケの顔」として知られた米澤嘉博氏（明治大学理工学部出身）は、明大在学時はSF研究会に所属し、迷宮の一員としてコミックマーケット創設に深く関わりました。漫研に属していませんでしたが、自作の漫画同人誌を持って漫研に「喧嘩を売りに行った」という逸話も語り継がれています。

一方、米澤氏の後任として現コミックマーケット準備会共同代表を務める筆谷芳行氏は、明大漫研のOBです。このように、コミックマーケットの歴史を語る上で、明大漫研や明治大学の卒業生は重要な位置を占めています。

明治大学現代マンガ図書館との連携

明治大学は、ポップカルチャー研究が盛んな大学として、日本マンガ学会事務局をキャンパス内に設置しています。さらに、2021年には「明治大学現代マンガ図書館」をリニューアルオープンさせました。これは、内記稔夫氏と米澤嘉博氏のコレクションを統合したもので、京都国際マンガミュージアムを上回る国内最大級のマンガ専門図書館です。明大漫研の公式機関紙『MORE』の全巻も、ここに所蔵されています。

2022年には岸田文雄首相がこの図書館を視察し、ちばてつや氏、里中満智子氏、弘兼憲史氏ら著名な漫画家と懇談。漫画の持つ力や文化への支援を国の役割として推進していく意向を示しました。北京大学などにも分館を設置するなど、国内外におけるマンガ文化の情報発信拠点となっています。

落語研究会設立への関わり

少し意外な関連性として、明治大学落語研究会の設立にも明大漫研が関わっています。1961年夏、明大漫研に出入りしていた学生二人が、風刺の極意を学ぼうと政治経済学部の藤原弘達教授（当時、明大の名物教授）を訪ねたことから話が進展し、藤原教授を部長とする落語研究会が創設されることになったというエピソードが残っています。

著名なOB・OG

明大漫研は、多岐にわたる分野で活躍する多くのOB・OGを輩出しています。主な人物としては、以下のような方々が挙げられます。

漫画家・イラストレーター：かわぐちかいじ、いしかわじゅん、相田裕、高田裕三、片山まさゆき、五十嵐浩一、西村宗、ほんまりう、田川滋、清水康代、西園フミコ、乙川朱里、宮島葉子、アキヨシカズタカ、小林たつよしなど
その他：山田詠美（小説家）、三条陸（漫画原作者）、筆谷芳行（コミックマーケット準備会共同代表）、勅使川原昭（志駕晃）（小説家）、あかほりさとる（小説家、脚本家）、和智正喜（小説家、脚本家）、長谷川晋一（東京創元社社長）、戸田利吉郎（少年画報社社長）、おざわゆうじ（尾沢工房）（編集者、漫画家）など

このように、明大漫研は単なる学生サークルの枠を超え、日本の漫画・サブカルチャーの歴史において重要な役割を果たし、多くの才能を育んできた組織であると言えるでしょう。

もう一度検索